大切な人がこれからも安心して暮らせるように。知っておいてほしい【成年後見制度】について。 | 大阪・関西エリアの看護介護専門の転職サイト  ユメシア転職JOB
  • 大切な人がこれからも安心して暮らせるように。知っておいてほしい【成年後見制度】について。

COLUMN

お悩み解決コラム

大切な人がこれからも安心して暮らせるように。知っておいてほしい【成年後見制度】について。

2021/12/06

最終更新日:2021/12/06

成年後見制度の課題と新しい取り組み

・成年後見制度(せいねんこうけんせいど)とは

成年後見制度という制度をご存じでしょうか。なんらかの理由で、判断能力が十分ではない方をサポート・保護するための法律上の制度です。成年後見人は本人の意思や自己決定を尊重しながら、様々な手続き等を本人に代わって行います。家庭裁判所が自立に基づき後見人を選びますが、自らが後見人や後見人にしてほしいことを決めることのできる任意後見制度もあります。

成年後見人の役割は大きく2つ、【身上監護事務】【財産管理事務】に分けられます。

– 身上監護事務とは

生活および療養看護に関する事務作業を、本人に代わって行います。契約の締結・費用の支払い・契約の介助・それに伴う処理等です。直接的な介護や看護などの行為は、含まれません。

– 財産管理事務とは

財産の管理を行います。印鑑や預貯金通帳の保管、年金やその他の収入の受領・管理、更には不動産などの重要な財産の処分まで多岐に渡ります。本人に代わってどんな事務を行うかは、本人の判断能力の状態によって決まります。又、ご本人の意向も加味し裁判所が最終の判断をします。

あなたにぴったりのお仕事探しはプロに相談してみよう

看護師

転職サイトでは、新しい転職先や働き方など、コンサルタントが無料で提案してくれます。今の職場が自分に合わないと悩んでいるのであれば、まずは相談してみるのがおすすめです。

成年後見制度の歴史

1990年以降、日本の高齢化率は14%を超え、認知症高齢者は増加の一途を辿っています。認知症などで判断能力の低下した方は、行動障害を抱えることがあります。家族のみで介護をしたり、財産の管理をすることは限界がありました。1997年、国は介護保険法を制定。介護問題がクローズアップされるようになりました。介護保険制度では、それまでの、福祉サービスの必要の有無を行政が決定する措置制度を原則廃止、利用者と福祉サービス事業者が対等な立場で交渉が出来る、契約制度に改められました。しかし、この2000年4月から施行された契約制度は、契約は“申し込み”と“承諾”という意思表示を重要な要素とする法律行為です。意思表示が出来ない認知症高齢者や、重度の知的や精神障がい者は、契約制度になじまないコトもあります。

そこで、本人に代わり、本人の最善の利益を守る成年後見制度が必要になりました。介護保険と成年後見制度が同時スタートになったのは、このような背景があります。また法制定当時、リフォーム詐欺が頻発していました。現在では、振込め詐欺などの特殊詐欺が社会問題になっています。判断能力が低下している方の人権や財産を守るために、取消権などの強い権限が必要だったことも背景にあるのです。

成年後見制度の課題と取り組み

認知症や知的障がい、その他の精神上の障がいがあることにより、財産の管理や日常生活等に支障がある人たちを、社会全体で支え合う必要があります。それが、現代の高齢社会における緊急の課題であり、共生社会の実現です。しかし、成年後見制度は、これらの人達を支える重要な手段であるにも関わらず、十分に利用されていません。利用者数は、認知症高齢者等の数と比較して、著しく少ないのが現状です。

その理由には、後見人である第三者が、意思決定支援や身上保護等の福祉的な立場に乏しいと言うコトです。更に、後見等の開始後、本人・その親族・後見人に対する支援体制が不十分であるコトが指摘されます。後見人の利用に関する相談については、後見人を監督する家庭裁判所が事実上対応しています。しかし、家庭裁判所は、福祉的な観点から、本人の最善の利益のために、必要な助言を行うことが出来ていないというコトもあり、成年後見制度にメリットを実感できないケースも多いようです。

これを考慮した2017年、成年後見制度利用促進基本計画が閣議決定しました。この計画は【利用者がメリットを実感できるような制度・運用】を目指しました。意思決定支援の考え方に沿った後見事務が行われる必要があり、2020年(令和2年)「意思決定支援を踏まえた後見事務のガイドライン」を発表、令和3年度にかけて、全国に普及・啓発を行っています。

成年後見利用促進計画について

成年後見利用促進計画では、この制度を利用しやすく、且つ、本人の意思決定に重点を置き、判断応力に課題のある人や、障害を持つ人と持たない人が平等に生活する社会を目指します。自己決定権の尊重に立ち、身上保護重視の観点から、個々のケースに応じた適切で柔軟な対応ができるよう、運用して行くコトが重要な課題とされています。そして課題に対しての対応を以下のように定めました。

1、利用者がメリットを実感できる制度・運用になるよう改善を進め、判断能力の低下が軽度から重度の方まで、幅広い支援をするコトが目標です。

2、担い手の育成として、これからの需要に対応して行けるよう、地域の住民の中から後見人候補者を育成。その育成の支援と共に、法人後見の担い手や、成年後見等の担い手を十分確保すること。

3、不正事案の発生を未然に防ぐこと。金融機関等に協力を求めると共に、後見監督人の仕組みの充実を図って行きます。

4、医療・介護等に対する意思決定が困難な人に対しては、意思決定支援者の一員としての役割を果たすこと。より詳細に本人の意思を反映できるよう、多職種の協議に参加し、家族間の意見を調整します。特に「4」は、人生の最終段階における医療に関わるコトです。

意思確認の方法や医療内容の決定手続きを、あらかじめ決めておくコトや、医療や療養について、患者・家族・医療従事者が話し合う自発的なプロセス(アドバンス・ケア・プランニング)の考え方も重要です。医療や福祉関係者等の合意を得ながら行いましょう。

課題を踏まえた新しい取り組み

前述した【成年後見利用促進計画】が浸透すれば、本人の意思を最後まで尊重し、必要な人に必要な支援を届けることが出来るようになります。そうすれば、後見人を支援するチームが発足し、不正防止が出来るなど、より良く変化して行くと思われます。しかし、まだ課題は残ります。1人1人の後見人は個性もあります。また、専門職の資格も弁護士・司法書士・社会福祉士など様々です。その人にしか分からない、という考え方も出て来るでしょう。理解のある後見人に当たれば良いのですが、誰がなるのか分からないので不安という声もあるのが現実です。

その問題に対し、法人後見などの後見人もチームで担います。更には、属組織的なことを避けるためにも、後見人を共同で受任するなど、様々な利用の方法があります。後見制度がよくわからないから、不安だからと支援者側が利用促進を阻害することは、利用者のより良い生活の質を考える上で、利用する権利を奪うことにも繋がりかねません。成年後見制度を利用するにあたり、申し立て時点から、信頼出来る人か、もしくは法人なのかということを見定め、候補者として確認することも大切な視点なのではないかと思います。

この記事を書いた人

村田優美

一般社団法人 後見センター ともする

社会福祉士 ケアマネジャー

福祉に特化した相談支援業務、特に高齢分野を得意とする。その他、アドヒアランスに関する研究、講師業・公演業など多岐に渡って活動。

=あなたにおすすめの記事=