初任者研修と実務者研修はどう違う?メリットとあなたに合った選択を紹介
2024/03/29
最終更新日:2024/03/29
「介護の仕事をしているけど、介護の知識や技術に自信がない」「研修を受けたいけど、自分にあった研修はどれなんだろう」と、悩んでいませんか。
介護の仕事には無資格・未経験でも就職できますが、介護の知識や基本的な技術がないと不安ですよね。とくに、人の身体に触れるケアでは、相手を傷つけないか心配でしょう。
しかし、介護の知識や技術が学べる研修を受ければ、自信を持って介護の仕事ができますよ。本記事では、初任者研修と実務者研修の違いや受講のメリット、どちらの研修があなたに向いているのかを解説します。
最後まで記事に目を通せば、あなたにピッタリな研修が見つかります。あなたにあった研修を受講して、介護の仕事で最大限に力を発揮してください。
初任者研修と実務者研修はどっちが上?
介護職員初任者研修(初任者研修)は、介護の基礎的な研修です。対して介護福祉士実務者研修(実務者研修)は、初任者研修の上位にあたる研修です。
それゆえ、実務者研修の方が初任者研修より高度な研修内容といえるでしょう。
初任者研修と実務者研修の特徴については、以下で解説します。
介護職員初任者研修
介護職員初任者研修は、従来のヘルパー2級にあたる資格です。
介護の経験がまったくない方に対して、介護の基礎的な知識やスキルの習得を目指します。仕事や家庭などで初めて介護をする方にとっては、スタートとなる資格でしょう。
初任者研修では講義と演習合わせて130時間の研修があり、研修受講後に行われる修了試験に合格すれば修了です。
介護福祉士実務者研修とは
実務者研修はかつてのホームヘルパー1級と介護職員基礎研修の後継資格で、初任者研修の上位にあたる資格です。
基本的な介護サービスを提供する力と、医療的ケアの知識・技能の習得を目指す資格であり、介護福祉士国家試験の受験要件とされています。
無資格から実務者研修を受講する場合、450時間のカリキュラムを約6か月かけて受講します。
初任者研修と実務者研修の違いは?
初任者研修は介護の基本的な研修で、実務者研修は初任者研修の上位にあたる研修です。そのため、研修内容が異なるのはもちろんですが、そのほかにも違いがあります。
本章では、初任者研修と実務者研修の違いを確認します。研修受講を考えている方は、それぞれの違いに注目して、どちらの研修を受講するかの参考にしてください。
受講科目・受講時間が違う
初任者研修と実務者研修では、受講科目数と受講時間が異なります。それぞれの科目数と受講時間は以下に掲載している表のとおりです。
初任者研修 | 実務者研修 | |
---|---|---|
受講科目数 | 9科目 | 20科目 |
受講時間 | 130時間 | 450時間 |
両方の研修に共通する科目もありますが、実務者研修の方が科目数も多く痰の吸引といった医療的ケアも含まれているため、より専門的な研修といえます。
また、実務者研修は介護福祉士試験の受験要件となっている点も、違うところです。
修了試験の有無が違う
初任者研修では、カリキュラム修了後に1時間の修了試験があります。一方、実務者研修に関しては、修了試験が義務付けられていません。
初任者研修の修了試験は資格の合否を決めるものではなく、学習の理解度を図るためのものです。
そのため、初任者研修を受講して復習していれば、合格できる内容でしょう。たとえ成績が悪かったとしても、追試験があるためそこまで心配する必要はありません。
初任者研修と実務者研修には共通点がある
介護の初心者を対象とした初任者研修と専門的な内容の実務者研修ですが、両方に共通する部分もあります。
たとえば、介護の基本となる以下の9科目は初任者研修だけでなく、実務者研修でも学ぶ分野です。
- ⚫︎人間の尊厳と自立
- ⚫︎社会の理解Ⅰ
- ⚫︎介護の基本Ⅰ
- ⚫︎生活支援技術Ⅰ
- ⚫︎生活支援技術Ⅱ
- ⚫︎介護過程Ⅰ
- ⚫︎認知症の理解Ⅰ
- ⚫︎障害の理解Ⅰ
- ⚫︎こころとからだのしくみⅠ
初任者研修を修了している方は、上記の科目が免除されます。
また、2024年4月から介護に従事する従業員に、認知症介護基礎研修が義務付けられました。しかし、初任者研修や実務者研修を修了している方は、共通して認知症介護基礎研修の受講が免除されます。
初任者研修・実務者研修!受けるにはどうすればいい?
初任者研修と実務者研修には、受験するための条件は設けられていません。
初任者研修は介護の入門資格であり、実務者研修は上位資格との位置づけです。しかし、初任者研修を受けなくても、実務者研修の受講は可能なのです。
どちらの研修も研修を実施しているスクールに通うか、スクーリングを合わせた通信課程で受講します。
初任者研修と実務者研修の給料の違い
介護の仕事では、介護に関する資格の取得が給与に反映されるのが一般的です。
初任者研修や実務者研修の資格は、どの程度給与に影響を与えるのでしょうか。
令和4年度の介護従事者処遇状況等調査結果における初任者研修と実務者研修の資格による月収の違いを、以下の表にしています。
初任者研修を修了した者 | 実務者研修を修了した者 | 資格を持たない者 | |
---|---|---|---|
全体 | 302,910円 | 302,500円 | 270,530円 |
特別養護老人ホーム | 335,480円 | 322,640円 | 292,710円 |
訪問介護事業所 | 310,920円 | 317,010円 | ‐ |
デイサービス | 272,610円 | 268,280円 | 242,560円 |
特別養護老人ホームや訪問介護事業所では、実務者研修の方が7,000円〜13,000円ほど高いようです。
資格がない方と比べると、その差はさらに大きくなり、全体の平均では30,000円近くの差になりました。
介護の仕事では資格の有無で給与が変わるため、ぜひ資格の取得を検討してください。
初任者研修のメリット
介護の仕事は無資格・未経験の方でもできるため、資格を取る意味があるのか疑問に思うかもしれません。
しかし、初任者研修を受講すれば、以下にあげる3つのメリットが期待できます。それぞれのメリットに目を通し、初任者研修を受講するかどうか検討してください。
介護の基礎が固まる
介護の経験がない方でも、初任者研修を受講すれば正しい知識と技術が学べ、適切な介護を実践できるようになります。
知識と技術を身に付ければ、介護の仕事でも自信を持って業務を遂行できるでしょう。
介護の仕事は未経験でもできますが、入職時に指導にあたるのは先輩職員が一般的です。しかし、先輩職員が必ずしも正しい技術を持っているとは限りません。
不適切な介護技術を学んでしまうと、介護を受けている方にケガを負わせてしまう可能性があります。また、介護する側の身体的な負担になるケースもあるでしょう。
それゆえ、正しい技術を専門の講師から学べるのは、初任者研修の大きなメリットです。
業務の幅が広がる
初任者研修を修了すれば、訪問介護サービス事業所での業務が可能になります。
訪問介護で働く場合、初任者研修を修了している必要があります。訪問介護は利用者さんのお宅にお邪魔して、生活援助や身体介護を行う仕事です。業務は一人で行うのが一般的なため、初任者研修といった研修で介護の基本を学んでいないと難しいと考えられているのです。
また、転職を考えた場合も初任者研修を修了している方は、介護の基本を修めているとみなされるため、非常に有利に転職活動ができるでしょう。
給与がアップする
令和4年度の介護従事者処遇状況等調査結果では、初任者研修の資格を所有している方の平均月収は302,910円で、無資格の方の平均月収は270,530円と報告されています。
介護の業界では資格を保有していれば、給料アップに結びつきます。資格取得による給料アップは、正社員だけでなくパートやアルバイトでも同様です。
初任者研修の取得で月収が3万円近く変わるのは、非常に大きな利点ではないでしょうか。
実務者研修のメリット
実務者研修には初任者研修にはない、さまざまなメリットがあります。
以下の記事で実務者研修のメリットを把握し、実務者研修があなたに合っているかどうか見比べてみましょう。
介護福祉士国家試験の受験資格が得られる
実務者研修を修了すれば、介護福祉士国家資格試験への受験が可能になります。
介護福祉士の資格を取得する方法は、いくつかのルートがあります。しかし、働きながら資格取得を目指す場合、3年以上の実務経験を積みあげて実務者研修を修了するルートが現実的でしょう。
そのため、介護福祉士の資格取得も見据えている方にとって、実務者研修の受講は大きなメリットです。
医療的ケアを学べる
実務者研修には初任者研修にはない、喀痰吸引や経管栄養などの医療的ケアがカリキュラムに組まれています。
介護のスキルだけでなく医療的ケアも学べるため、介護の実践者として総合的なレベルアップが期待できるでしょう。
超高齢社会の日本では、介護の業界においても医療ニーズが高まっています。ゆえに、医療的ケアが実践できる介護職員は、どの介護サービス事業所においても重宝されるでしょう。
ただし、実際に医療的ケアを行うには、喀痰吸引等研修を受ける必要があるため、気を付けてください。
サービス提供責任者にキャリアアップできる
実務者研修を修了すれば、訪問介護事業所においてサービス提供責任者への道が開かれます。
訪問介護事業所は、サービス提供責任者の配置が義務付けられています。そしてサービス提供責任者は、実務者研修や介護福祉士といった資格の取得が義務付けられているのです。
サービス提供責任者は訪問介護計画書の作成やケアマネとの連携、ヘルパーの人材管理を行う重要な仕事です。
そのため、サービス提供責任者の経験は、さらなるキャリアアップにつなげられるでしょう。また、マネジメント業務にも対応できると評価されるため、転職する場合にもあなたの強みとなります。
給与がアップする
実務者研修を修了すれば、給与アップが期待できます。
令和4年度の「介護従事者処遇状況等調査結果実務者」では、実務者研修修了者の平均月収は302,500円でした。一方で資格を持たない者の平均月収は、270,530円です
また、実務者研修を修了してサービス提供責任者にキャリアアップすれば、平均月収は339,290円へアップします。
そして、研修を修了して3年の実務経験を積めば介護福祉士も目指せるため、さらなる給与アップも期待できるのです。
どっちがいい?初任者研修がおすすめな人
実務者研修よりも初任者研修を受講した方がいいのは、どのような人でしょうか。
結論を言うと、基礎から介護を学びたい方や費用をおさえて早く資格を取りたい方は、初任者研修の受講をおすすめします。
実務者研修は初任者研修の内容も含み、より高度な介護の知識や技術が学べます。
しかし、研修内容は介護の基本を前提とした応用的な内容になり、その分時間も費用もかかってしまいますよ。
初任者研修がおすすめな人の詳しい理由は、以下の記事を参考にしてください。
基礎からしっかり学びたい人
介護の経験がない方や初めて介護を学ぶ方は、初任者研修がピッタリの内容です。
座学だけでなく実際に身体介護を行う実技もあるため、身をもって介護を体験できます。
実際に介護を行うことでイメージとのギャップを埋められるため、介護の仕事が自分にあっているかどうかも確認できるでしょう。
費用をおさえてすぐに介護の資格を取りたい人
「すぐに、できるだけ安く介護の資格を取りたい」と考えている方は、初任者研修の受講を検討しましょう。
初任者研修は通信課程だとおよそ3週間ほどで取得でき、費用もおよそ3万円台です。
早く資格を取って、介護の仕事につきたいと考えている方は、初任者研修が向いているでしょう。
なお、ユメシア転職JOBを運営する株式会社aunでは、初任者研修の資格取得支援を行なっています。一定の基準のもと、実質無料で初任者研修の資格を取得していただくことが可能です。ぜひお気軽にご相談ください。
どっちがいい?実務者研修がおすすめな人
実務者研修は初任者研修の上位に位置づけられている研修のため、介護の基本が身についている方におすすめです。
そのほか、以下に該当する方も実務者研修を受講した方がいいでしょう。以下の記事を読んであなたの状況にあてはまるのであれば、実務者研修の受講を考えてください。
介護福祉士やサービス提供責任者を目指している人
介護福祉士の資格取得や訪問介護のサービス提供責任者を視野に入れている方は、実務者研修の受講が効率のいい選択です。
介護福祉士国家試験の受験やサービス提供責任者になるためには、実務者研修の修了が要件です。
この先、実務者研修の受講が決まっているのなら、時間と費用を節約するために実務者研修を受講しましょう。
身体介護技術は身に付けている人
実際に介護の仕事をしていて、職場研修などで身体介護技術を身に付けている方は、実務者研修を受講しましょう。
初任者研修は、初めて介護を学ぶ方に向けた研修です。実技演習の中で、人を相手にして排泄介助や移乗介助といった実際の介助方法を学びます。
身体介護が初めての方であれば、初任者研修から多くのことを学べるでしょう。
しかし、すでに介護の業務を行っている方で、相応の身体介護技術を職場研修で学んでいる方には物足りないかもしれません。それよりも、より上位の実務者研修でスキルアップを目指してください。
そもそも初任者研修は必要?
実務者研修は初任者研修の内容を含むため、初任者研修の必要性があるか疑問に思う方もいるでしょう。
たしかに、介護の仕事でキャリアアップしたいなら、実務者研修がおすすめです。実務者研修の修了は介護福祉士国家試験の受験要件となっており、訪問介護事業所においてサービス提供責任者の配置要件でもあります。
しかし、介護の仕事に興味はあるが、自分に向いているかわからず迷っている方もいます。
そのため、介護の仕事に向いているか試してみたい方は、初任者研修で実際の介護場面を経験できるのです。
事前に介護職のイメージをつかんでおけば、介護の仕事に就職しても想像とのギャップに戸惑うこともありません。
また、仕事とは関係なく、家庭での介護のために基本を学びたい方もいるでしょう。家庭での介護を目的にしている方には、実務者研修はハードルが高いといえます。
そのため、介護の基本を学び、家庭介護で活かしたいと考える方にとって、初任者研修は丁度よい研修なのです。
研修費用は助成金・給付金が活用できる!それぞれの違いを解説
研修を受講したいがお金に余裕がなくて迷っている方は、助成金や給付金の活用を検討してください。
国や自治体が実施している助成金や給付金制度を活用すれば、実務者研修や初任者研修の費用をおさえられますよ。
ここでは、実務者研修や初任者研修受講に関して活用できる助成金や補助金を表にまとめました。ぜひ参考にしてください。
項目 | ハローワークの職業訓練 | 教育訓練給付制度 | ひとり親への自立支援教育訓練給付金 |
---|---|---|---|
目的 | 雇用保険を受給できない求職者の資格取得や技術習得支援 | 働く方の能力開発やキャリア形成を支援し、雇用の安定と就職促進を図る | 母子家庭・父子家庭のひとり親の就職やキャリアアップを支援 |
対象者 | 介護分野へ就職を希望する雇用保険受給資格者 | 一定期間以上雇用保険に加入している方 | 母子家庭の母または父子家庭の父で、特定の条件を満たす者 |
内容 | 無料の研修を実施 | 受講費用の一部を国が支給 | 指定された教育訓練の受講費用の一部が支給 |
支給条件 | なし | 教育訓練の修了 | 教育訓練の修了 |
ハローワークの職業訓練や教育訓練給付制度を詳しく知りたい方は、ハローワークへ問い合わせてください。
また、ひとり親への自立支援教育訓練給付金を詳しく知りたい方は、お住いの自治体に問い合わせてください。
【まとめ】初任者研修・実務者研修の違いを理解して最適な研修を選ぼう
初任者研修は介護の基礎的な研修を行い、実務者研修では介護の基礎を踏まえて高度な研修を行います。そのため、介護の基礎を固めたい方には、初任者研修がピッタリです。
また、介護福祉士への受験を考えている方や知識・技術を習得してさらなるキャリアアップを目指したい方は、実務者研修を受講しましょう。
どちらの資格も、給与アップが期待でき、転職する場合も研修の修了が強みとなるでしょう。実際に研修の修了を期に、好待遇の職場へ転職した方も少なくありません。
ぜひ、あなたにあった研修を受講し、キャリアアップにつなげてください。
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