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DREAM INTERVIEW

各界リーダーへの夢インタビュー

植松 努
株式会社植松電機 代表取締役/ 株式会社カムイスペースワークス 代表取締役/ NPO法人北海道宇宙科学技術創成センター(HASTIC) 理事

“より良く”を追求する人間の本能をフル回転させ、子どもたちを明るく照らす、諦めない世の中に。

—あなたのお仕事について具体的に教えてください。

 建物を解体した時などに出た廃材を分別してリサイクルするんですが、その際に使うマグネットという機械を造ることが私の会社の主軸です。この事業には幸いなことに競争相手がおらず、マグネットが成功したおかげでいろんなことができるようになりました。

 いま、景気低迷の影響で、例えばJAXA(※)などの宇宙開発産業では予算が削減され、実験・研究ができなくて困っている人々がたくさんいます。ならば、私たちが実験環境を安く提供し、その人たちの成長を後押しできれば、結果的には世界の役に立てるのではないかと考え、そのお手伝いをしています。

 すると、宇宙開発の経験をしたうちの会社の子たちがみるみる成長してくれて、街のお菓子屋さんでお菓子を焼く装置を自動化する研究や、オホーツク海の漁師さんと協力して帆立貝を養殖する装置の研究などもするようになりました。

 これまで磨いていきた技術を、世の中の困ったことや悲しいこと、不便なことを改善するために使うのが私たちの仕事です。そんな風に何でも引き受けていたら、いろんな話が来るようになりました。上記の他に、北海道の医大と連携し医療機器の開発、力仕事である介護職の手助けになれるサポートスーツや雪道を走れる電動車いすの研究なんかもやっており、本当にいろいろなことができるようになりました。何屋とひと言では表せないほどです(笑)。

 私は学問や技術というものは、世の中の課題を解決するためのものだと思います。少しでもこんな道具があれば、あんな機械があれば助かるのに…どの人にも、頭の中だけにある人知れないアイデアがあるんじゃないでしょうか。それを形にするお手伝いができれば、何よりの誉れです。

※JAXAとは、国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構のこと。日本の航空宇宙開発政策を担う国立研究開発法人。植松電機とはロケットの共同打ち上げ実験など、さまざまな研究を行っている。

—この仕事を始めたきっかけを教えてください。

 私はもともと、飛行機を造る人になりたかったんです。大学では飛行機の勉強をし、卒業後に名古屋で飛行機を造る会社に入社。そこでね、ふと思ったんです。飛行機を造る会社に入りたい…という夢を叶えてしまったわけなんですよ。あまりにも強く夢を追い続けた結果、夢が叶った途端にどうしていいかわからなくなって。散々ぐるぐる悩んで会社を退職し、実家で飛行機を造ろうと帰ってきたわけです。

 実家は、車の電気部品を修理する仕事を父がひとりで担っていたんですが、当時の経営状況は大変なもので。何とかならないかと、当時普及し始めたばかりのリサイクル事業のため、マグネットを造り始めたという流れなんですね。

 そんな中、ひょんなことから北海道大学の先生と巡り合ってロケットのエンジン製作から、そのうちロケットまるごとを造ることになりました。その先生が「あそこはちょっと変わった会社だ!」なんて、周りの先生に言ってくれたみたいでして。他にも「無重力の実験装置を造れませんか」「人工衛星を造る手伝いをしてほしい」…etcそんなふうに関わってくれた人たちとの縁で、結果的に仕事が次々増えていったという感じですね。目の前にあった課題を「自分ならこう解決しよう」と、納得いかない状態を放置せず進んだ結果、いろいろとつながったのでしょう。

人間ができる職業は、たくさんあります。でも、“仕事”となるとひとつしかないと考えていて。全ての職業に共通していることは、“より良く”を追求することでしょう。「もっと良くならないかな」「今のままでいいのか」、そんなふうに追い求めることは、どんな分野においても成り立つ“仕事”ではないでしょうか。

 (開発に携わっていると)絶望感を感じる場面はたくさんありますよ。「なぜ、こんなことをやってるんだろう?」と思うことは、割と現在進行形で発生します(笑)。やってもやっても変えられない、徒労感というか、その時に何とか踏ん張り続けてこられたのは、祖父との記憶があるからです。幼い頃、私の祖父=じいちゃんが褒めてくれた日々は、私の中の大きなバックアップになっています。そういう大切な人の笑顔だとかが、人間が踏ん張れる最後の拠り所なのかな。

 さらに付け加えると、絶望していても何も変わりませんよね。悩んだり悔やんだりしている間に寿命もどんどん減っていくので、それなら進んだ方がいい。そう思うのはたくさん絶望したからかもしれません(笑)。

—あなたの強みは何ですか?

 もし私に強みがあるとしたら、読んできた本の量だと思います。私の部屋へ来た人はみんな驚いて、「小学校の頃のスイッチのままでしょ!」なんて言葉もよく言われます。私の本棚には、恐竜、クワガタムシ、飛行機、少女漫画、宇宙の本…実にめちゃくちゃなジャンルの本が並んでいます。

 脳の回路って、知らず知らず単純化したがるそう。繰り返し同じことをやってると、単純化されて反射速度が上がっていくことがありますよね。これはいいことですが、想定してなかった問題に対応できなくなることも考えられます。そこへいくと、私みたいな脳の中がぐちゃぐちゃなタイプは、予期せぬものに出会った時に答えが出しやすいんじゃないかと。これまで読んできたべらぼうな量の本で頭の中がぐちゃくちゃしていることによって、なかなか思いつかないアイデアにたどり着けるのかな、という気がしています。

 私は小学生時代から、ひとりが好きで、他の子と一緒に何かをすることが苦手でした。それもきっと、他の人とちょっと違う視点をつくったのかなという気がしないでもない。ある意味、私の強みなのかな。

 そもそも、学校の先生からはダメ人間だとずっと言われ続けてきました。ただ学校のやり方が合わない、授業での相性が悪いことで、自信を奪われるわけです。飛行機を造りたい少年だった私に先生は、「飛行機やロケットは、東京大学に行かないと造れない」と言うわけです。でも、ライト兄弟は東大に行ってませんよね。そういうふうに、やったことがない人はできない理由を並べるんだけど、やったことがある人(伝記本の偉人たちがそうでした)は「私はこうしたよ」と、教えてくれるんですよ。それが私にとっては最高の励みになりましたね。できない人の話は聞かない方がいいです。できない理由はいろんな種類があります。お金がかかる、頭が良くないといけない、成功する人は一部だ…とか。実はこれ全部突き詰めると同じ意味になる。それは「努力しても無駄だよ」です。そう教えられると人は頑張らなくなります。読書で出会った伝記上の人々は、努力は報われることを教えてくれました。それが私の元気、支えになったなと思いますね。

 最近は、学習障害と発達障害で特別支援学級に入る子どもが増えています。そういう子どもたちのこと、私は例えるならX-MENのように考えています。記憶力やこだわりの強さは、X-MENの特殊能力のように輝いて見える。でも現状、彼らの就職先はとても狭いものです。それではいけませんよね。そんな彼らにより高度なことを学んでもらうため、札幌に就労継続支援A型作業所を造りました。全ての子どもたちが輝けるようにしたい、そういう気持ちが強くあります。作業所では、ロケットの部品なんかも造ってもらったりしていますよ。

—あなたの使命とは何ですか?

 前述の「より良くを追求する」こと…と言いたいところですが、これは人間の本能だと思うんです。今の人間がいるのは原始人が生き残ってきたから。その生き残った原始人は、生き残る工夫をしてきた人たちなんでしょう。寒さに耐えられる暖かい服を作った人、瓦礫の中を歩くために靴を作った人、そういう工夫できる人々が勝ち、工夫と努力をしなかった人は現在までの歴史の中で滅びたはずです。ということは、私たちは工夫と努力の末裔なんですよ。だから私が「より良くしたい」と考えることは本能なんじゃないかな。

 では、それとは違う使命なら、私は学校の先生からひどい目にあったものですから、誰かの自信と可能性を奪われない社会をつくりたいですね。人は誰でもすごい可能性を持っている、想像がつかない奇跡が詰まっていると信じています。それを奪ってはならないんですよ。自信をなくした人は他の人の自信を奪うようになって、連鎖していってしまう。じゃあ自信を奪う奴をやっつければいいのかって言ったら、それは違いますよね。だから自信を奪われない人をつくる、それが私の生涯を懸けてやりたいことですね。

 生まれた時から諦め方を知ってる人はいません。諦め方、諦める理由なんていうものは、全て後天的に教えられたものなんですよ。だから大人が諦め方さえ教えなければ、子どもたちは超ポジティブなまま! そもそも、諦めとは、実は戦前からの人口増加期に起こった世渡りの手段に過ぎなかった。昔は諦めても長い物にまかれていれば勝手に経済が拡大したから何とかなりました。でも今は諦めると生き残れない世の中。だからやっぱり諦め方を教えない、自身の身に入れないことはすごく大事だと感じますね。

 世の中を変えたいと感じた時、実は大人を教育するシステムが存在しないと気が付いたんです。大人は変わらない。だったら子どもと関わるべきだと私は思っていて、修学旅行生の受け入れをはじめ、子どもたちと関わる努力をしています。でもひとつ、大人を変える方法もあるんですよ。大人に対する強制力を持ってるのは、何を隠そう企業です。企業なら大人を変えられる。だから企業がこうなってほしいという大人像を提供していけば、それで社会が変わるはずなんですよね。

—最後にあなたのこれからの夢を聞かせてください。

 まずは、教育を変えたい。今までの日本は、鎌倉時代あたりから現在に至るまで、人口増加しか経験したことがありません。この人口増加期の価値観が現在も引き継がれているんですが、ご存知の通り、今はもう人口減少期で全く合わない価値観です。日本の人間が誰しも初めて経験する場面なので、そこで通用する教育を提供しなければいけません。それには学校です。2021年から専門学校の学科を創設します。他にも、小・中学校を造るプロジェクトも行っており、同じ思いのたくさんの先生方とこれまでのあり方を変える仕組みを作り始めたので、私が元気なうちにはかなう夢だと思います。

 これまでの人口増加期に適していた、消費をしなければ回転しない経済から、人口減少期に適した新しい経済システムを、何とか形にしたいことです。そのために必要なものは街です。日本の家はとても寿命が短かいでしょう。家のローンや子どもの学費なんかからも解放していきたいですよね。

 そんな夢をかなえたあとの、僕の最後の夢は、プラモデル屋の店主になりたいですね。人間が創ってきたさまざまな物体、その形にはきちんと意味があります。例えば車のプラモデルとかでも「この部品、どうしてここに付いてるんだろう?」「どうしてこんな形になってるんだろう?」「他の車と比べてみよう」…と考えていくと、大きな学びにつながります。そういったことを伝えられるようなプラモ屋になりたいな。人が創ってきた美しいものを知ってほしいです。製作者の思考とユーザーのさまざまな声の反映があって存在する美しい形…そういったことを考える力を育てたいですね。

 私の会社には、たくさんの幼稚園や保育所の子どもたちが見学に訪れます。創業して20年、子どもたちの姿はずっと変わりません。「このボタンを押してみたい人?」って尋ねれば、一斉に集まって来るような、そんな素直さはずっと同じです。それなのに、若者へ無気力感が広がっているだとか、自殺率が上がっているなんていうのは、必ず後天的教育に原因があります。子どもの資質さえ健やかに伸ばすことができれば、間違いなく世界は変わりますよ。大人が諦め方を教えなければ、その子どもたちが15年後に世界を救う。みんなで力を合わせて、諦め方を教えない世の中をつくりたいですね。

HP

https://uematsudenki.com

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