あなたのお仕事について具体的に教えてください。
2024年1月より、ほっとキッチンという高齢者施設向けの給食会社で企画営業職として勤務しています。それまでは13年間高齢者施設運営会社で勤務し、現場から取締役まで一通り経験しました。ほっとキッチンでは今後M&Aを活用して九州全域で高齢者施設を運営していく計画ですので、その事業の立ち上げと拡大に私のキャリアを活かせられればと考えました。
また、これは個人としての仕事になりますが、講演やセミナー、コンサルティング活動なども行っています。講演は、学校で子どもたちに介護の仕事の魅力を伝えたり、介護事業者やそこで働く人たちに向けて認知症ケアや離職率改善の話をしたりと年に30回程度行っています。コンサルティングは高齢者施設の運営改善などに関して相談、依頼が寄せられます。
この仕事を始めたきっかけを教えてください。
元々バスケットボールをしていて、大学卒業後は実業団チームに行こうかと考えており、実際にチームから声もかかっていました。しかし親が大学の学費を払っていなかったために1年で退学になってしまいました。その後はフリーターをしながら地元のバスケットボールチームで活動していましたが、そこのマネージャーが介護職だったのが介護との出会いです。
もともと親が介護職をしていましたが、私自身は介護の仕事に全く興味がなく、むしろ「汚い仕事」と嫌っていました。しかし、親からは「早くどこかで正社員として働け」と言われていましたし、マネージャーからは「介護なら正社員で雇ってくれる」と誘われたこともあり、「とりあえず介護でもいいか」という消極的な姿勢で介護の道に進みました。
動機が動機でしたので、入社してしばらくは仕事に魅力を感じることもありませんでした。しかし、あるとき余命半年の宣告を受けていたご利用者様の希望でラグビー観戦に連れて行きました。観戦後、それまで毎日「死にたい」と口にしていたご利用者様が、笑顔で「生きていてよかった」と話すのを見て「ご利用者様の夢を叶えるお手伝いができる介護の仕事は素晴らしい」と感じるようになり、仕事に対する向きあい方が180度変わりました。
あなたの強みは何ですか?
人の意見やアドバイスを素直に受け入れ、すぐに実行や改善に移せる性格であることです。私自身のこうした経験から、部下を指導するときも「どうすれば、こちらの言いたいことを素直に聞いてくれるだろうか」を考えて接することができます。介護の現場は、年上の部下がいたりなど難しい人間関係のことも少なくありません。また、現場と経営陣の意識や考え方の違いが問題になることもあります。そのときに「自分の考えが正しい」「どうせ相手は理解してくれない」と意固地になるのではなく、相互理解を深める話し方などをしっかりと指導できていると思います。
あなたの使命とは何ですか?
私自身が実感した「介護の仕事は、ご利用者様の夢を叶えるお手伝い」ということを1人でも多くの人に知ってもらうことです。「介護福祉士など介護の専門家が身近にいれば、老いることが怖くない社会」を目指します。
実際の介護の現場では、ご利用者様の夢を叶えるために何か新しいことに取り組もうとすると、スタッフが「忙しい」「危ない」「何かあったら誰が責任を取るのか」「上司が反対するに決まっている」と行動する前から「できない理由」を口にすることがよくあります。そうした人たちが「時間の作り方」や「上司へのプレゼンテーション力」を学べる場も必要です。そのため「竜馬塾」という現役介護職向けの有料勉強会を2ヵ月に1回のペースで開催しています。私の地元である長崎県での開催ですがオンラインでの参加も可能です。こうした活動を通じて「熱量の多い介護職」を増やしていきます。
あなたのこれからの夢を聞かせてください。
「介護福祉士として日本一になること」です。何をもって日本一かという点については議論の余地があると思いますが、介護技術でも知名度でもSNSのフォロワーでも何でも構いません。私が日本一なることが「高齢者が最後まで夢を叶えることができる社会」の実現に近づくと思います。
最後に、夢や目標に向かって新たな一歩を踏み出そうとしている方へ、メッセージをお願いします。
私自身、3回の転職歴がありますが「道を誤った」と思ったことは1回もありません。転職先とそれまでの職場で業務内容や仕事の進め方などが全く同じということは絶対にありません。それらの違いは、そのまま自分に知識・経験として蓄積されていきます。特に、ご利用者様一人ひとりの性格や身体状況などに大きな差がある介護の仕事の場合は、一つの職場に長く務めるよりも、転職をし、さまざまな経験を積んだ方がプラスになることが多いと思います。ぜひ、新たな1歩を踏み出してもらいたいと思います。
転職でタブーなのは「前の職場ではこうだった」など新しい職場についてダメ出しすることです。仮に職場に疑問や不満を感じることがあったとしても、口にするタイミングを考えましょう。今の職場の経営陣が「このままでいいのだろうか」と運営上の問題点を意識するようになれば「山本さん、これに関して以前の職場ではどうだったのか聞かせて下さい」と向こうから改善の相談を持ち掛けてきます。そのときこそ、自分の経験や考えを語るチャンスです。