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DREAM INTERVIEW

各界リーダーへの夢インタビュー

佐々木 淳
医療法人社団悠翔会 理事長・診療部長
佐々木淳

その人の「より良く生きる」を支えるのが医師の役目
2035年までに全市町村に在宅医療体制の構築を目指す

あなたのお仕事について具体的に教えてください。

在宅医です。2006年8月に独立開業し、現在、首都圏で17ヵ所、沖縄県で1ヵ所の在宅医療に特化したクリニックを運営しています。医師は非常勤も含め98名。患者数は約6700人です。単独法人で運営する在宅専門の医療機関としては日本最大規模だろうと思います。

この仕事を始めたきっかけを教えてください。

中学2年生のときに、手塚治虫の漫画『ブラックジャック』を読んで、医師に興味を持ちました。中でも、脳腫瘍を罹っていた母が手術を受けて回復した経験もあり、脳外科医に憧れました。ブラックジャックは誰の手も借りずに1人で脳外科手術を行っていましたが、実際にはそんなことは不可能で、複数の医療従事者で手術をします。「1対1で患者と接する医師になりたい」と思っていた私は、内科医として病院で勤務を始めました。

しかし、外科などと違い、内科の医師が担当する病気は、基本的には「治癒しないもの」です。医師は病状を管理して必要に応じて投薬などを指示し、患者は生活を医療に管理されながら、最後はその病気で亡くなっていきます。そのことが「果たして自分は患者の役に立っているのだろうか」という疑問につながっていました。

医師になって5年目のときに大学院で学ぶことになり、生活のためにアルバイトとして在宅医を始めました。しかし、在宅医は、内科医以上に患者の病気を治すことはできません。それまでの私の考えは「病気が治らない=諦めること」でしたので、在宅医を必要としている患者やその家族に対しては「不幸だ」という印象を持っており、病気を治せない医師がそこに介在することに居心地の悪さを感じていました。

その考えを変えてくれたのは、あるALSの女性患者でした。彼女は私のそうした気持ちを汲み取ったのか、目線で文字を入力する装置を使って次のようなメッセージを送ってきました。「私は今の状態を全然辛いとは思っていません。身体は動かないけれどベッドの上で楽に過ごしています。動けなくなることで逆に精神的な自由を得ました」「食事はできませんが、食べ物を軟らかくして口に含ませてくれれば味や香りを楽しむことができます。車椅子を使えば飛行機に乗って旅行にも行けます」 

私はそのメッセージを読んで「病気を治せなくても医師は患者を幸せにできる。『より良く生きる』という患者の想いを支えることが医師の役割である」と気づかされました。そこで在宅医として独立開業しようと決意し、大学院は3ヵ月で退学しました。

あなたの強みは何ですか?

開業して事業がある程度軌道に乗った2008年の時点で、「個人としての事業拡大」ではなく、「在宅医療を全国に広める」ことに事業の方向性を定めたことだと思います。開業医はクリニック・病院名に自分の名前を入れたがります。しかし、私はどこにも佐々木という名前を入れませんでした。「私自身が有名になったり、いい生活をしたりする必要はない」と考えたからです。こうした考えを徹底した結果、同じ想いを持ち一緒に働く医師が増え、それにより提供する医療の品質があがり、それが新たな患者を増やすことになり、増えた患者に対応するために医師も増えていく、という良いサイクルを生み出しています。

現在18のクリニックを運営していますが、その中には私が1回も足を運んだことがないところもあります。私が一から十まで関与しなくても、各クリニックが自走し、状況に応じてサテライトクリニックを開設するなどして成長を続けていく、という組織づくりを行えました。

あなたの使命とは何ですか?

「医療を通じて人を幸せにすること」です。医療がフリーアクセスの日本では、誰でもすぐに高度医療に接することができますし、患者もそれを求める傾向が強くなっています。しかし、誰でもどこかの時点でどれだけ高度医療を施しても病気は治らなくなり、やがて死を迎えます。日本は、この人生の最後の部分をサポートするリソースが、他の先進諸国に比べて充実していません。2022年以降は、在宅医療を全国に広げることに力を入れ、その人の自分らしい生き方を支えられる体制を構築していきたいと思います。

あなたのこれからの夢を聞かせてください。

まず2025年までに、「首都圏の在宅医療不足地域ゼロ」を目指します。現在、首都圏の市区町村に在宅医療機関がありますが、特定の疾患には対応できていないところが少なくありません。

次に2035年までに「在宅医療機関の無い自治体を無くす」ことです。まだ離島や過疎地を中心に在宅療養支援診療所が無い自治体が約500あります。人口が少ないこれらの地域では患者数が見込めないため、新規開業をしようとする医師もいません。そうした地域にも在宅医療を届けたいと思います。さすがに自分たちで全てを直接行うのは難しいでしょうから、オンライン診療を使ったり、地域のコミュニティナースと連携したりして都市部と同じレベルとまではいかなくとも、安心・安全な在宅療養生活を送れる環境を整えることを目指します。

最後に在宅医の育成です。コロナ禍で、何かあったときに気軽に相談できる家庭医・かかりつけ医がいない人が多いことが浮き彫りになりました。これを受けて病気のときだけでなく、日頃から生活習慣のアドバイスなどを行い、その人により添える医師が必要である、という意識が若い医療従事者にも広がってきています。こうした人材を当法人で雇用し、在宅医として育成していきます。2023年より本格的に実施していきたいと考えています。

最後に、夢や目標に向かって新たな一歩を踏み出そうとしている方へ、メッセージをお願いします。

医療も看護も介護も「人を幸せにする」ことが目的ですが、自分自身が幸せでないと他人を幸せにすることはできません。仕事の面でいえば、「やりがい」と「働く環境の良さ」の両方が揃って初めて幸せを感じることができると思います。エッセンシャルワーカーにとっては、「理念やビジョンがしっかりしている職場であること」がその2つの要素につながります。理念がない仕事はただの作業です。「自分は何のためにこの仕事をするのか」「何のために自分はここで働くことを選んだのか」を他の人に自分の言葉で説明できるかどうかで、進む道を選んでもらいたいと思います。

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