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認知症ケアは、【その人の世界観を肯定し、その方の世界観に入り込むコト】

2021/12/13

最終更新日:2021/12/13

認知症ケアの3ない原則

【認知症ケアの3ない原則】と言えば、皆さんも良く耳にし、既にご存知の方も多いと思います。

・否定しない

・バカにしない

・自尊心を傷つけない

これは、認知症ケアに限ったコトだけではなく、当然のように、人との関わりの中でとても大事なコトです。「認知症の人だから」と言う発言は、介護現場でもよく聞かれます。時には「あの人、認知だから」とか「最近、認知が進んだよね」と言う言葉が、日常茶飯事に使用されているようです。これらの言葉は全て【認知症ケアの3ない原則】に、残念ながら反する発言なのです。

皆さんはもう、お分かりですよね?認知症になっても、鈴木さんは鈴木さん、田中さんは田中さん、1人の人間に他ならないのです。ましてや“認知”とは、辞書で正しい意味を調べると、

1.子供を認知する

2.物事が認識できる と書かれてあります。

プロである介護福祉士やケアマネジャー、看護師ですら「最近あの人、認知が進んだよね」と言う内容の会話をします。その会話の本当の意味を言うと「最近あの人、モノゴトが認識“出来る”ようになったよね」と、全く逆の意味になるのです。私の母も認知症ですが、専門職の人から、認知、認知と言う不適切な言葉を聞くのは、とても胸が痛くなります。専門職なのだからこそ、正しい用語を使用し、利用者さんの尊厳を大事にしてほしいモノです。

世界観

 

特別養護老人ホームで、私がユニットリーダーをしていた時の話です。利用者さんに、元警部補の方がいらっしゃいました。元警部補はアルツハイマー型認知症でした。記憶障害を主とする認知症です。警部補と聞いて、“警部補・古畑任三郎”を想像する方も多いのではないでしょうか。あのドラマのキャラとは正反対で、彼は真面目で一本気と言う性格でした。

その元警部補は夕方になると、険しい表情で「あの書類はどうした!?」と、介護スタッフに聞いて来るのです。対応した介護スタッフのA君は「そんな書類なんかないよ。あるわけないじゃん」とイライラして答えました。すると元警部補は「なんだとー!?今日までに仕上げなきゃいけない、大切な書類なんだぞ!!」と声を荒げ、怒鳴り始めたのです。そう、A君の声掛けは、不適切なケアだったのです。その対応は、元警部補のBPSD(周辺症状)を悪化させていたのでした。

すかさずフォローに入った私は「警部補、あの書類は秘書である私が仕上げ、昨日には提出は済ませております。だから、ご安心下さい」と伝えました。そうすると元警部補は「あ〜そうか〜。なら良かった。ありがとう」と胸を撫で下ろすのです。

【認知症ケアは、その人の世界観を肯定し、その方の世界観に入り込むコト】

元警部補は、夜になると居室から出て「あの事件はどうした!?」と、一生懸命に仕事に取り組もうとする姿勢を見せます。私は警部補に「警部補、明日は張り込み捜査があると聞きました。今夜寝ないと、お体に差し支えます。もし、犯人を捕まえられたら、警部に昇進するとも聞いていますよ?」すると彼は「そうだな、警部になり損ねたくないからな!早く寝ないとな」と居室へ戻り、朝までグッスリ熟睡するのでした。

他の介護スタッフが夜勤の時も、彼が居室から出て来て、寝ずに大声を出すので困っていると聞きました。ユニットの夜勤スタッフ達に、私の対応方法を伝え、とにかく真似してみて欲しい、結果は必ず出るからと、介護チームに情報を共有しました。すると「波多野さん、面白いくらいに彼が寝てくれるようになりました」との声が相次いだのです。スタッフ全員が情報を共有し、統一したケアを実践するコトで、彼は毎晩、安眠出来るようになったのです。

・その人の世界観を肯定し、その人の世界に入り込む

・男性は地位や肩書を一生背負い、プライドで生きるモノ

・その方の職歴やニーズやその先に焦点を当てるアプローチ

このコトで、痒い所に手が届くケアが実現され、彼の痒みが取れたという訳なんです。その人の世界観を肯定し、その人の世界に入り込むコトで、利用者さんにも介護スタッフにとっても、Win-Win(双方が勝ち)な関係性が構築されるのだと実感しました。利用者さんもスタッフさんも、持ちつ保たれつ。支え合いの中で幸せな日々が送れるんです。

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多職種連携

 

施設介護には“多職種連携”と呼ばれるモノがあります。介護は様々な専門職とのチームケアです。多職種連携とは、介護職員、看護職員、ケアマネジャー、生活相談員、セラピスト、医師 等々が連携をし、利用者がより良い生活が送れるようサポートするコトです。

では、多職種連携がスムーズに実施されるには、どうしたら良いと思いますか?それは、日頃からの報告・連絡・相談が必須です。そして、各々の職種の分野を、それぞれが認め合い、尊厳出来るコト。お互いに認め合えず、どちらが上だとか、いらないプライドがあると、多職種連携は出来ません。好き嫌いで仕事をしてはいけないと私は思います。一番の被害を被るのは、利用者ですから。多職種連携の出来ている施設は、とても風通しが良く、雰囲気が良い。スタッフも利用者さんもとても良い表情をし、笑顔が絶えないのです。

また、利用者さんの異変をいち早く察知するコトで、危険な目に合わずに済みます。利用者さんが、今必要としているサービスを迅速に提供するコトも叶うのです。これは、日頃から各専門職同士、コミュニケーションが図れている証拠です。普段から「ありがとう」「おはよう」「お疲れ様」と言うちょっとした挨拶も、とても大事なのです。

人は何かしてもらったら、その相手にお返ししてあげたいと思う生き物です。お互いに“互助の精神が必要”なのです。何かして貰えずとも、こちらから相手にしてあげる。その気持ちがあるだけで、相手にも気持ちは伝わるモノです。そうする事で、自然と人間関係が円滑となり、多職種連携もスムーズに行くものだと、私は思います。

この記事を書いた人

波多野 充

介護福祉士/ 認知症介護実践リーダー/ 介護教員/身延山大学非常勤講師

介護福祉士として介護現場に従事する事、21年目。 ユニットリーダーやサービス提供責任者、教育担当リーダー、介護福祉士実習指導者を歴任。 かながわサービス福祉振興会・かなふくセミナー登壇歴有り。介護福祉士会研修講師登壇。 認知症サポーター養成講座の講師としても、地域にて 登壇歴12年。 専門学校専任教員、非常勤講師も経験し介護現場に、 教育のあり方・重要性を介護現場実践教員として伝えて行っている。