――あなたのお仕事について具体的に教えてください。
シニア向けのマニキュア「ネイルペン アキュレ」を製造するラヴィーナ株式会社の代表取締役です。
商品の大きな特徴は、安全性が高い、刺激臭がしない、塗布後に落としやすいなどの点を考えて水性にしたことです。また、シニアの方でも塗りやすいようにペン型にしました。個人で購入する方もいますが、デイサービスセンターなどの介護施設が美容レクリエーション用として購入するケースが多いです。
また、実際に施設を訪問して、ネイルペンを使った美容レクリエーションを行っています。現在、月に20件ほど訪問しています。私自身も訪問しますが、私が実施する研修の受講修了者に委託して訪問してもらうこともあります。研修期間はオンラインでの座学のほかに実技・実習など1ヵ月ほど。「すでに介護美容の現場で働いているが、プラスアルファの知識や技能を身に付けたい」と考えて受講する人もいます。
既存化粧品の化粧療法への課題を自分で解決しようと起業
――この仕事を始めたきっかけを教えてください。
元々化粧品メーカーで勤務していましたが、シニアとは全く無縁でした。
きっかけは、独居をしていた祖母が、新型コロナの影響で外出や人との交流が減少したために認知症になってしまったことです。私も何度か様子を見に行きましたが症状はどんどん進行し、やがて私の名前もわからなくなってしまいました。
ある日、祖母が目の前でメイクをしていた私に興味を示すような反応をしました。試しに祖母にネイルをしてみたところ、表情に変化が見られました。その後、繰り返しネイルを行っていくうちに発話量も増え、私の名前も思いだすなど認知機能の回復が見られました。これを機会にシニア向けの化粧療法について学びました。しかし、同時に「既存の化粧品は化粧療法のニーズを満たせていない」という課題も実感しました。それを自分で解決しようと考え、1年半かけて商品開発をして2021年に起業しました。
何事にもためらわずに挑戦できる
――あなたの強みは何ですか?
「まずやってみよう」「失敗を恐れない。失敗してから考えよう」という意識が強く、何事にもためらわずに挑戦できる点です。
最近では、当社製品は介護用品のカタログに掲載されていますし、展示会の出展などを通じて効率的にアピールできるようになりました。しかし、創業当初は施設にひたすら電話をかけての営業でした。全く話を聞いてくれずに切られることが大半だったのですが「これまで世の中に全くなかった新しいものが、すぐに受け入れられないのは当たり前」と心が折れることはありませんでした。また、「断られた経験は『どうすれば会話を自分のペースに持ち込めるか』を研究する機会になる」と前向きに考えました。
「介護美容」という分野をきっかけに、介護現場への入り口を広げること
――あなたの使命とは何ですか?
施設を訪問した際に、利用者が塗り絵など時間をつぶすことだけが目的のようなレクリエーションをしていることにショックを受けました。心から楽しめるレクリエーションとして美容を導入する施設を1件でも増やすことです。
また、美容レクリエーションの効果は、ご利用者様だけでなく、現場で働くスタッフの方々にも波及します。実際に、導入施設ではご利用者様がネイルで喜ぶ姿を見て、スタッフさん自身の表情が明るくなったり、美容への関心が高まったりするケースを多くに目にしてきました。
女性が多い介護現場において、美容を通じてスタッフさんの日々の気持ちが前向きになり、現場全体の雰囲気が明るくなることは、非常に大きな価値があると考えています。
私の使命は、こうした「介護美容」という分野をきっかけに、介護現場への入り口を広げることです。美容をフックに現場の魅力を知る人を増やし、人手不足解消の一助となること。そして、介護美容を活用することで、働く方々が副業などでプラスアルファの収入を得られるような、持続可能なキャリアのサポートをしていきたいと考えています。
シニア向け総合化粧品メーカーの「老舗」に
――あなたのこれからの夢を聞かせてください。
現在の「ネイルペン アキュレ」以外にもアイテムを増やし、シニア向け総合化粧品メーカーとして「老舗」と言われる会社を作り上げることです。どこの大手化粧品メーカーも、一部の基礎化粧品を除いては「シニア向け」と明確に打ち出した展開はあまりしていません。せいぜい60歳までがターゲットです。
また、シニア向けの化粧品が成長するには「シニアがメイクをするのが当たり前」という風潮を作る必要がありますし、そのためには「シニアがメイクをして出かけたくなる用事」が必要です。シニアが対象のイベントというと「健康・介護予防」をテーマにしたものが多い印象です。これらに加えて「美容・メイク」などがテーマのイベントが頻繁に開催されるような社会を作っていきたいと思います。
失敗を恐れず、自信をもって一歩を踏み出してほしい
――最後に、夢や目標に向かって新たな一歩を踏み出そうとしている方へ、メッセージをお願いします。
人生において、仕事が占める時間は非常に大きなウェイトです。その時間がただ「辛いもの」になってしまうと、人生そのものの彩りが失われてしまいます。だからこそ、私は何よりも「楽しく働くこと」を大切にして欲しいと思っています。
新たな一歩を踏み出そうとしたとき、初めての場所や慣れない仕事で「失敗すること」を極端に恐れないでほしいです。失敗したからこそ気づけることや、そこからしか学べないこともたくさんあります。
大切なのは、失敗をただのミスで終わらせず、「次にどうすればいいか」と前向きに考ええていくことです。その積み重ねが自分の成長につながり、結果として仕事がどんどん楽しくなっていきます。失敗を恐れず、あなたの夢や目標に向かって、自信をもって一歩を踏み出してほしいと願っています。







