産業保健師に求められることは?仕事内容やスキル、役割、向いている性格を解説
2024/07/01
最終更新日:2024/07/01
「産業保健師に興味があるけど、どのようなことを求められるのかな」と、疑問に思っていませんか。
保健師といえば、行政や学校などで活躍する職業と思っている方も多いでしょう。実は、企業でも保健師は活躍しています。
本記事では企業で働く産業保健師の仕事内容や必要なスキル、向いている人の特徴などを解説します。
記事を読めば産業保健師について理解し、あなたに向いている職業かどうかがわかるでしょう。
産業保健師とは?
保健師とは、保健師助産師看護師法に定められた看護職のひとつですが、看護師とは違いケガや病気の予防が専門です。
保健師は働く場所によって学校保健師や行政保健師と呼ばれ、企業で働く場合は産業保健師と呼ばれます。
産業保健師は、企業で働く従業員の健康と安全を支援する役割を担います。
産業保健師が必要とされている理由
企業の社会的責任が求められる昨今、産業保健師の重要性や必要性が注目されています。
企業の生産性向上には、従業員の健康維持・増進が重要との認識が高まっています。また、長時間労働や過重労働による従業員の健康リスク、メンタルヘルス不調なども、企業に課せられた健康課題でしょう。
それゆえ従業員の健康管理体制強化のため、健康診断の実施だけでなく健康相談やメンタルヘルスケアを行う企業も増えてきました。そして、その中心的な役割を担うのが産業保健師です。
また、2015年に施行された「ストレスチェック制度」では、従業員50人以上の事業所でストレスチェックが義務づけられました。産業保健師はストレスチェックの実施においても、重要な役割を担います。
さらに、新型コロナウイルス感染症の流行により、職場の感染症対策の重要性が再認識されたことも、産業保健師が求められる理由のひとつでしょう。
産業保健師の配置状況と雇用形態
企業で働く従業員の健康維持をサポートする産業保健師ですが、どれだけの企業に配置されているのでしょうか。
厚生労働省の「令和4年衛生行政報告例(就業医療関係者)の概況」による、産業保健師の就業状況は以下に掲載する表のとおりです。
保健師の総数 | 60,299人 |
行政保健師(都道府県・市町村・保健所で働く保健師) | 43,258人 |
産業保健師(事業場で働く保健師) | 4,201人 |
保健師の約7.0%が、企業の産業保健師として従事しているようです。
雇用形態についても以下の表にまとめているため、参考にしてください。
雇用形態 | 割合(実際の人数) |
正規雇用 | 81.4%(49,113人) |
非正規雇用 | 17.5%(10,526人) |
派遣 | 1.1%(660人) |
出典:厚生労働省:令和4年衛生行政報告例(就業医療関係者)の概況
産業保健師の仕事内容は?
産業保健師の主な仕事は従業員の健康管理ですが、そのほかにも、さまざまなものがあります。
ここでは、産業保健師の仕事内容について解説します。
従業員の健康診断・保健指導
産業保健師の基本的な役割として、従業員に対する健康診断の実施があげられます。
健康診断は産業保健師を中心に企画・実施して診断結果の分析を行い、再検査が必要な従業員に受診を促します。
また、健康診断で分析した従業員の健康課題に対して、作業環境の測定や改善提案、作業管理への助言を行うのも産業保健師の仕事です。
従業員のストレスチェック等の実施・サポート業務
ストレスチェックも、産業保健師の重要な仕事です。
2015年労働安全衛生法の改正により、50人以上の労働者がいる事業所でストレスチェックが義務化されました。
ストレスチェックは、法令で医師や保健師などの資格者に限定されています。そのため、産業保健師がストレスチェックの実施やサポートを行います
従業員への保健指導や重症化予防
従業員が心身の健康状態を保てるように健康相談や保健指導を行うのも、産業保健師の仕事です。
相談や指導では生活習慣病の改善や、ハラスメントや過重労働によるメンタルヘルスに関する問題について取り扱います。
また、一定時間を超える長時間労働者に対して面接や健康状態の確認を行い、必要に応じて労働時間短縮の提案や病院受診を促します。
健康教育・イベントの企画実行
産業保健師は従業員に対する健康教育や、健康増進を目的としたイベントなども担当します。
たとえば以下にあげるテーマで、研修会や講習会を開催し、健康情報を発信します。
- ⚫︎生活習慣病予防
- ⚫︎感染症対策
- ⚫︎メンタルヘルス
- ⚫︎禁煙促進運動
- ⚫︎運動習慣づくり
従業員の健康意識を高めて自主的な健康管理を促進するのも、産業保健師の重要な仕事です。
医療機関、産業医への連絡・調整
産業保健師は従業員の健康問題について、医療機関や産業医と情報の共有を行います。
従業員は産業医よりも、産業保健師の方が接しやすいと感じています。また、産業医は不在なことも多いため、従業員の健康状態を把握するのは難しいでしょう。
そのため、産業保健師が産業医と従業員の橋渡し役を担い、必要事項を産業医に報告し情報を共有します。
書類整理・ファイリング・請求処理などの事務処理
産業保健師は健康管理や健康増進のサポートだけでなく、事務処理も重要な仕事です。
産業保健師は従業員の健康診断結果や保健指導の記録、ストレスチェックの結果など、さまざまな健康に関する情報を取り扱います。
また、従業員の健康管理のために、データ収集・分析といった作業も必要です。就業先によっては、請求処理なども業務に含まれます。
産業保健師に求められる資格やスキルは?
産業保健師の仕事は医療的な側面を多く含むため、専門性の高い能力が必要です。
本章では、産業保健師に必要なスキルを解説します。
記事に目を通し、自分が産業保健師としてのスキルを持ち合わせているか、確認してください。
産業保健師には臨床経験が求められることがある
産業保健師の仕事には健康診断の実施や健康相談のほかにも、従業員の急な体調不良やケガへの対応も求められます。そのため、看護師として臨床経験のある方が望ましいでしょう。
臨床経験がなくても産業保健師になれる企業もありますが、研修を経て必要な知識とスキルを身につける必要があります。
産業保健師は、医療的な専門性が求められる仕事です。それゆえ、看護師としての経験を積んでおくことが、産業保健師として活動する上で有利に働くでしょう。
産業保健師にはコミュニケーション能力が求められる
産業保健師として働く上で、コミュニケーション能力は非常に重要です
相手の気持ちに寄り添いわかりやすく情報を伝えるためには、ひとり1人と信頼関係を築く必要があるでしょう。
また、健康に関する具体的な施策や企画の提案などを行う際も、高いコミュニケーション能力が必要です。
産業保健師には、コミュニケーション能力が必須といえます。
産業保健師にはデータ分析力やPCスキルが求められる
産業保健師は、データを分析する力やPCを使いこなす力が必要です。
日々の業務では各種の報告書や提案資料の作成、プレゼンテーション資料の準備や各種統計資料などを作成しなければなりません。
また、従業員の健康課題を正しく把握し適切な対策を立てるためには、データを読み解く力も必要です。
産業保健師に向いているのはどんな人?
産業保健師に向いている方は、特有の特徴をもっています。
以下で解説する向いている人の特徴を読めば、あなたが産業保健師に向いているかがわかります。
また、向いている人の特徴を持ち合わせていない場合でも、どのような資質が求められるかがわかれば、自分の改善するところも明確になるはずです。
社会経験が豊富な人
産業保健師には、企業での実務経験のある方が向いているでしょう。
看護経験があった場合でも、企業と病院や保健所では職場環境が大きく異なります。企業特有の長時間労働や健康問題、メンタルヘルスの問題に対応するには、企業に勤めた経験と保健師としての経験が活きてきます。
そのため、企業での実務経験がある産業保健師は、スムーズに業務に入れるでしょう。また、企業の方も産業保健師として働いた経験がある方を優遇する傾向です。
産業保健師は、求人数に対して応募者が多い職種です。しかし、看護師の資格を保有していても、保健師として活動した経験がない方も少なくありません。
そのため、社会経験がない方は、治験コーディネーター(CRC)として企業に勤め、行政保健師として保健師の経験を積み上げてステップアップするのがおすすめです。
人の話を聞くのが好きな人
産業保健師を選ぶ際、知識や能力だけでなくコミュニケーション力が重要です。
産業保健師は健康相談を通じて従業員の困りごとを聞き出し、アドバイスを提供します。
そのため、高い共感力と傾聴能力があると、従業員も心を開きやすくなるでしょう。
人当たりがよく信頼されやすい方は、誰もが安心して相談できる産業保健師として活躍できるはずです。
自分で考えて提案・行動ができる人
産業保健師は健康管理やメンタルヘルスの専門家として、必要に応じてさまざまな提案をする立場にあります。
また、健康管理には日常的に連携する人事労務の職員や産業医だけでなく、医療機関や関係業者とも交渉・提案を行い、行動しなければなりません。
ゆえに主体的に提案できる人、行動力のある人は、産業保健師としてどの企業も欲しがる人材です。
まとめ
産業保健師は、企業で働く従業員の健康と安全をサポートする役割を担います。業務内容は専門性が高いため、看護師としての臨床経験だけでなく、保健師としての経験も重要視されます。
そのため、保健師としての実績がない方は、保健師の経験を積む必要があるでしょう。とはいえ、保健師の実績づくりといわれても、どこで経験を積めばいいのかわからない方も多いのではないでしょうか。
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