――あなたのお仕事について具体的に教えてください。
介護事業会社シャロームの代表です。シャロームは2000年に現会長である私の父が創業しました。現在、大阪で「晴れる家」のブランドで6棟の住宅型有料老人ホームを運営するほか、訪問介護、訪問看護、グループホーム、福祉用具事業などの介護事業、家財整理や引っ越しなどの保険外での生活サポートサービスを手掛けています。また、グループ会社では、高齢者の身元保証・任意後見、不動産の売買を行っています。
加えて、全くの個人的な活動ですが、2015年に同じ大阪の介護関係企業の社長と漫才コンビ「3代目スイッチオフ」を結成しました。「M-1グランプリ」にも毎年エントリーしています。お笑いを通じて、特に若い世代の人たちに「介護の魅力」と「笑い(ユーモア)が人間関係を構築する上で大切なことである」と伝えていくことが目的です。
手に職をつけようと介護福祉士の道へ
――この仕事を始めたきっかけを教えてください。
高校を卒業した後、ホテルスタッフやルートセールススタッフなどいくつかの仕事をしました。25歳のときに、今は妻となっている女性と交際していたこともあり「彼女のためにも一生働ける仕事に就こう。そのためには何か手に職を付けよう」と考え、介護福祉士の養成校に通い始めました。
しかし、卒業はしたものの思うように就職ができませんでした。そうしたところに大手介護事業者で勤務していた父が独立してシャロームを設立したため、一緒に働くことになりました。父からは明確に「会社はお前に継がせる」と言われたことはありませんでしたが、父が身体を壊したことがきっかけで2019年9月に跡を継いで社長になりました。
現場で「叩き上げ」られてきたからこその現場目線が強み
――あなたの強みは何ですか?
2000年に介護の仕事を始めて以来、ずっと現場を経験してきた「叩き上げ」という点です。常に現場目線に立ちながら、ご利用者様・スタッフ双方の幸せを最大限にすることを考えた経営ができているという点は強みだと思っています。
また、結果的に会社の経営を任されてはいますが、自分は「将来は経営者になる」という考えはありませんでした。このせいもあってか態度や言動、雰囲気が「良い意味で社長っぽくない」と言われます。そのため特に年齢が若かったり経験が浅かったりするスタッフでも気軽に話しかけてきます。こうした何気ない交流が、仕事・プライベートに関係なくスタッフが抱える悩みや困りごとを早い段階で把握し、解決することにつながっています。
人生の終末期を受け入れることができる考え方を伝えていきたい
――あなたの使命とは何ですか?
社名のシャロームとは、聖書にある言葉で「社会的にも精神的にも平穏で満たされた状態」という意味です。これからもわかるように、当社はキリストの精神に基づく介護サービスを提供しています。各ホームにはチャプレン(企業内牧師)が1~2名在籍していますし、私も両親もキリスト教徒です。また、スタッフも1割がキリスト教徒です。
もちろん、ご利用者様の信仰の自由は最大限に尊重していますが、ご利用様を支える上で必要であれば、神様の愛、キリストの愛を積極的に伝えるようにしています。例えば、死ぬことは一般的には恐怖かもしれません。しかし「死は滅びではなく、天国への凱旋の希望」と信じることができれば、死に対する恐怖は無くなり、死に向かう老いについてもしっかりと向き合えます。こうした人生の終末期を受け入れることができる考え方を、一人でも多くの人に伝えていきたいと考えています。
海外での事業展開を
――あなたのこれからの夢を聞かせてください。
ここ数年、インドや中国から視察に来るなど、海外の人と仕事で知り合う機会が増えました。また、当社自身もインドで日本語学校を設立しています。そうした交流の中で「私たちの国で介護事業をして欲しい」というオファーをいただくようになりました。また、当社の国内での新規事業所開設計画も2030年以降は白紙になっています。それらの状況を踏まえて、将来は海外での事業展開ができたらいいなと考えています。できれば、当社の理念が活かしやすいキリスト教国が希望です。まだ何も具体化してはいませんが、社内には「もし、海外で事業をするのであれば、私が現地に赴任してみたい」と希望するスタッフもいます。
現状維持は衰退。やりたいことがあるのなら挑戦を。
――最後に、夢や目標に向かって新たな一歩を踏み出そうとしている方へ、メッセージをお願いします。
特に、最近の若い人を見ていると「『リスクをとること』を余りにも恐れすぎているのではないか」と感じます。しかし、成功はリスクを乗り越えた先にあります。リスクを恐れて何も行動を起こさないのは、一見すると現状を維持しているようですが、実際には衰退です。もし、何かやりたいことがあるのなら、どんどん挑戦していきましょう。
また、高い目標を掲げること自体は否定しませんが、あまりにも高すぎる目標は、行動を始める際の足かせになりかねません。まずは実現しやすい目標を立て、少しずつ成功体験を積み重ねていくことも必要なのではないでしょうか。
例えばM-1ですが、相方はともかく、私は「何が何でも1回戦を突破しよう」とは考えていません。「忙しい中でもネタを作り、練習時間を確保して、毎年出場する」という実践可能な水準の目標を掲げることで無理なく継続できます。その継続の中から生まれてくるものや見えてくるものがたくさんあるのではないでしょうか。