――あなたのお仕事について具体的に教えてください。
「まちづくり作業療法士」というオリジナルの肩書を名乗っています。現在、訪問看護事業所で作業療法士として勤務するほか、地域共生社会の実現を目指して活動する任意団体チームエンパワーメントの代表として、滋賀県彦根市を拠点に活動しています。
介護・福祉・医療に「カッコいい」「楽しい」というイメージを
――この仕事を始めたきっかけを教えてください。
作業療法士になったのは26歳のときです。それ以前からクラブDJなどの音楽活動をしていました。ただし本業は作業療法士と考えており、音楽は「より多くの人とつながる、より多くの発信をする」など、本業を広げるための趣味活動として位置づけていました。
2018年に私と同様に音楽活動をする介護・福祉・医療関係者の仲間たちでエンパワーメントレコーズというグループを作って、介護・福祉・医療に「カッコいい」「楽しい」というイメージを持ってもらえるような楽曲の制作や配信をしてきました。
2022年に「より活動領域を広げたい」と考え、多くのジャンルの専門家を集めてチームエンパワーメントを発足しました。現在、エンパワーメントレコーズはチームの1プロジェクトの位置づけとなっています。このほかにチームとしては、映画館にいくのが難しい事情を抱えた小さな子どもやその親に映画を楽しんでもらうインクルーシブシネマ、誰かを助けることができる人が、支援を必要とする人たちにその意思を伝えることができるマーク「I WILL HELP U」の普及活動、街に賑わいを創出する拠点としてアパレルショップやカフェ、バーの運営をしたりしています。
2025年11月には彦根市で「手伝うことで世界は優しくなる」をテーマにしたイベントを開催しました。
作業療法士として人の夢や希望を叶える
――あなたの強みは何ですか?
要介護者をはじめ、何らかの支援を必要としている人が叶えたい夢や希望を実現するための手段は全て作業といえます。まず、作業を通じてその人の身体機能の改善を目指す作業療法士であること自体が私の強みと言えます。
また、作業療法士がその人の夢や希望を叶えるには、手段を数多く持つ必要があります。私はDJをはじめとする音楽が手段になりますし、チームエンパワーメントを発足させたことで「買い物に行きたい」「映画を見たい」などの希望に応じる手段を多く持つことができました。これは他の作業療法士にはない大きな強みです。
今後も、チームエンパワーメントでは、さまざまな取り組みを行っていきますので、さらに多くの人たちを支え、夢や希望を叶える手伝いができると考えています。
地域の人全員が『支え手』となる地域共生社会を
――あなたの使命とは何ですか?
チームエンパワーメントのメンバー・活動内容を拡大させることです。現在でも店舗運営、イベント、DJ、講演など複数の手段で活動をしていますが、メンバーが増えれば手段も増えます。そして、世の中のありとあらゆるものが手段になり得ます。「自分の好きなこと、得意なことはきっと誰かの役に立つ」ということを、私たちの活動を通じて多くの人に理解してもらい、地域を元気づけていく人材を増やしていきます。
チームエンパワーメントには入会資格や規則はありません。誰にでも広く門戸を開いています。目指すゴールが一緒であれば、途中の方向性は違っても構いません、多くの人に仲間になってもらいたいと思います。そして、最終的には「地域の人全員が『支え手』となる地域共生社会」を作り上げていくことが使命です。
彦根市を「地方都市の理想像」と呼ばれる街に
――あなたのこれからの夢を聞かせてください。
彦根市を「地方都市の理想像」と呼ばれる街にしていくことです。私が関わっている介護・福祉だけでなく、観光、教育、子育てなどジャンルは何でも構いません。
彦根はゆるキャラの「ひこにゃん」で全国に知られましたし、彦根城などの観光資源もありますが、今後は高齢化などにより活気が失われていくことが考えられます。そして彦根は歴史のある城下町だけに、さまざまな面で「古いもの」が多く残っており、新しいものや人、動きなどを素直に受け入れにくいという独特の地域性があります。
こうした地域を活性化していくためには、地域の人全てが「自分は地域のために何ができるか」を考え、自分事としてまちづくりに取り組んでいく必要があるでしょう。現在でも学校に講演に行って子どもたちにその考えを伝えていますが、今後はそれをもっと多くの人に伝えていきたいと思います。
介護は個々のプライベートな部分を活かすことができる仕事
――最後に、夢や目標に向かって新たな一歩を踏み出そうとしている方へ、メッセージをお願いします。
まず、仕事に関しては「自分がやりたいことが叶えられる業種・職種なのかどうか」を考えて選ぶことが大切です。
世の中には多くの仕事がありますが、その中でも介護は1人と長く、そして深く接する仕事の一つです。思い出話や雑談をすることも大切な仕事です。その相手は一人ひとり全く違う人生を歩んできましたし、性格や考え方も違います。そうした多くの人たち全てを幸せにしていくには、より多くのケースに対応できるように自分自身が「多くの引き出し」を持つことが求められます。
介護に限らず、どのような仕事でも長く続けていればプロと呼べるだけの知識や技術は身に付きます。しかし、介護の仕事については、そこにプラスアルファが必要なのではないでしょうか。もし、あなたがこの先も介護や福祉の仕事をしていきたいのであれば、趣味など引き出しを増やす努力をしていきましょう。介護以上に個々のプライベートな部分を活かすことができる仕事はありません。







