猪塚　2021年8月にオープンした50室の住宅型有料老人ホームです。外部の訪問看護事業所と連携して日中は看護師が常駐しています。母体が給食会社ということもあり、食事サービスに力を入れています。昼食限定ですが、セレクトメニューを用意しており、事前の予約無しに、その場で好きな方を選べます。

福山　大事にしているのが「入居者様のしたいことや望むことを実現する」です。たくさんの方と関わることでコミュニケーションがとれ、ストレス解消や不安な気もちを取り除けます。そのために、高齢者施設ではあまり例のない様々なサービスを提供しています。
例えば、私はアロママッサージの資格を持っており、自費でのサービスになりますが、希望する入居者様に提供します。このほかハンド・フット・足裏のマッサージもあります。また「施設内バー」もあり、不定期ですが夜はアルコールとおつまみを提供します。コロナ禍で実現はしていませんが、地域の方にボランティアでバーの店員として携わってもらいたいと思いますし、食堂は常に地域の方に開放して「集いの場」にしていく考えです。「高齢者施設だから○○は無理・・・」と初めから制約を設けるのではなく、常に「何かできることはないか」と可能性を追求しています。

猪塚　まず会社・ホームの想いや理念をきちんと理解し、自分の中に落とし込むことを徹底します。ホームの立ち上げは私たちを含め4人が中心で行いましたが、オープン4ヶ月前から話し合いを重ね、各種業務マニュアルを作成しました。このマニュアルを確実に実践できることを人材教育の第一歩としています。

福山　4人は元々別々の介護会社で働いていました。それぞれに「自分がしたいこと」と「実際に提供していること」の間にギャップを感じていました。マニュアルでは、そうした一人ひとりの「本当はこうしたかった」という想いを実現するために、「私たちがすべきことは何か」を盛り込んでいます。介護サービスはどうしても流れ作業的になってしまいます。「作業に追われ、入居者様一人ひとりと接することができなかった」ということが無くすことが狙いです。

猪塚　ただし、今後入居者様が増えていく中で、マニュアルでは想定していない事態もどんどん発生するでしょう。マニュアルは現在が完成形ではなく、今後様々に変化をしていきます。それに向けて、現場で起こっている些細な問題に気づき、解決策を考え、意見・提案できる思考も育てていきたいと考えています。目指すはトップダウン型ではなく、ボトムアップ型の組織です。

猪塚　初任者研修は修了していたが実務は未経験という20代後半の男性パートスタッフが3ヶ月前より働いています。現在、実務者研修の資格取得に向けて学校に通っているため、土日のみ勤務しています。介護の経験は全スタッフの中で最も浅いですが、学校で学んだ介護に関する最新の情報・知識・技術をきっちりとホームのみんなに伝えてくれますので、サービス品質の向上などにとても役立っています。ホームにとって欠かせない存在です。（インタビュー2022年1月時点）

猪塚　とにかくスタートしてまだ日が浅いホームです。会社としても第1号のホームですので、「想い」や「理念」はかっちりと固まっているものの、それを具体的にどのように実践していくか、例えば委員会活動などについては、これから築き上げていく部分が多いです。「自分のアイデアや意見を元に、誰もが笑顔になれる理想のホームをつくり上げていく」という楽しさを味わえるのは大きなメリットです。

福山　ただし、人によってはこの状態を「粗削り」「未成熟」と感じてしまいます。介護を長年してきた会社で働いた経験を持つ人の中には「このホームでは、こんなことも実践できていないのか」と批判的に考えたり、不安を感じたりする人もいるようです。

福山　介護では、その会社・事業所の「想い」にどれだけ共感できるかが、長く、気持ちよく働く上でポイントになると思います。面接などでそこをしっかりと見定めて下さい。

猪塚　過去には「私には、自費のサービスはできません」と退職してしまった人がいました。「介護とは○○だ」「自分は○○の仕事をしていればいい」などといった固定観念がない、柔軟な思考を持った人を歓迎します。