――あなたのお仕事について具体的に教えてください。
2022年に設立した「一般社団法人国際介護士協会」という団体の代表理事を務めています。世界の中には今後の高齢化を見据え、日本の介護の技術や考えを取り入れたいと考えている国が多くあります。また、日本の介護関係者の中には海外での展開を強化していくところも増えていくでしょう。しかし、その際には、単に日本の考え方や方法をそのまま用いるのではなく、相手の国の文化や宗教観、生活習慣などを理解・尊重した上で、日本の介護とうまくアレンジした新しい介護を作っていくことが重要です。
そうしたノウハウを持つ人を「国際介護士」と定義し、その養成と認定を協会の主な活動目的としています。国際介護士は、自身が介護現場などに入る必要はなく、コーディネーターやプロデューサー的な立場として活動してもらいます。2025年3月より養成講座の受講生募集を開始したいと考えています。
海外での介護人材育成に目を向け「国際介護士」に
――この仕事を始めたきっかけを教えください。
もともと介護職として、特別養護老人ホームや訪問介護の現場で働き、その後フリーランスの介護福祉士となりました。その活動の一つとして介護人材育成の講師も考えていたのですが、この分野ではすでに多くの人が活躍しており、まだ経験の浅い私が新たに入り込む余地は少ないと実感しました。そこで、海外での介護人材育成に目を向けました。
実はそれまでプライベートでも海外に行ったことが無かったのですが、海外の介護に関わる人とSNSでつながったり、直接手紙を送ったりと熱心にアプローチしているうちに中国の介護業界に詳しい人と懇意になることができ、中国人人材の教育に携わるようになりました。2016年より「国際介護士」を名乗っています。今では、様々な国からオファーが来るようになりました。「国ごとに事情に詳しい人がいれば、そうしたオファーにもっと適切に応じることができるだろう」と考えて協会を設立しました。
フットワークの軽さと人付き合いの良さがメリットに
――あなたの強みは何ですか?
思い立ったら即座に行動に移せるフットワークの軽さです。「失敗したらどうしよう」事前に色々と考えることはありません。むしろ「いい経験になるだろう」と失敗することを前向きに考えることができます。そうしたプラス思考であることが、結果として成功につながっていると思います。
また、本当はかなりの人見知りなのですが、必要であればどのような立場、年齢の人の輪の中にもどんどん入って行けます。肩肘を張らずにフランクな感じで人と接しますし、接してもらうことが好きなので、人に嫌われることがあまりありません。また、私自身も人の好き嫌いがありません。一般社団法人国際介護士協会にもいくつか事業をしているのですが、いずれの事業でもこうした人付き合いの良さが大きなメリットになっていると思います。
日本の介護職は世界でもトップレベルの仕事をしている
――あなたの使命とは何ですか?
中国をはじめとする海外の介護の様子を知るにつれ、日本の介護の品質の素晴らしさや、それを支える介護職の能力の高さを改めて実感するようになりました。しかし、当の日本の介護職自身の自己肯定感があまり高くないのが現実です。介護職に「自分たちは世界でもトップレベルの仕事をしている」という自覚を持ってもらうことが必要と考えています。それが、社会全体の介護に対するネガティブなイメージの払拭につながると思います。
また、私自身が「いつまでも欲張って生きたい」という考えを持っています。介護が必要な状態になっても、お酒を飲んだり、お洒落をしたり、旅行をしたりと好きなことをして過ごすのが夢です。
しかし、現在の介護施設などでは「あれは禁止、これはダメ」と多くのルールや制限があり「好きなことをあきらめてもらう」のを前提で生活をしてもらっています。どれだけ介護予防を頑張っても、人生の最後に介護が必要になる人が出るのは防げません。そうした人たちが好きなことができないのはとても悲しいことです。この介護の現状を変えていきたいと常々思っています。そのためにも、国際介護士のような、それぞれの考え方や文化の違いを尊重できる質の高い人材が必要だと考えています。
考え方や思いを直接言葉で人に伝えたい
――あなたのこれからの夢を聞かせてください。
何らかの形で、私の名前や実践してきたことを社会に残したいと考えています。私はSNSなどでの情報発信よりも、考え方や思いは直接言葉で人に伝える方が性にあっています。そこで自分の思いや生き方などをプレゼンテーションする女性対象のコンテスト「BEAUTY JAPAN」にエントリーしたところ、NANIWA大会でindependences賞を受賞し、11月に開催される日本大会に出場することになりました。
各地の大会で受賞された80名近い強者が出場するそうなのですが、まずはここで国際介護士としての使命を伝えて、グランプリを受賞することが今の大きな夢です。
「可能性は無限大」「スタートラインは自分で決める」
――最後に、夢や目標に向かって新たな一歩を踏み出そうとしている方へ、メッセージお願いします
まず、多くの人に伝えているのは「可能性は無限大」「スタートラインは自分で決める」の2つです。何か物事を始めるのに遅すぎるということはありません。またスタートを切る、切らない自体も含めて他人に決めてもらうことではありません。何かやりたいことを見つけたのならば、自分の足でしっかりとスタートラインに立ちましょう。
また、フリーランスを経験した立場からすると、最近の人たちが「自由だから」とフリーランスの働き方を選択することには少々違和感を覚えます。フリーランスは「自由な立場」ではなく「すべてのことに対して自分で責任を負わなくてはならない立場」です。失敗をしても誰も守ってくれませんし、ゴールラインも自分で決めなくてはなりません。「今の仕事が辛いから」などの目先このことだけを考えて進路を決めると、後悔することにもなりかねません。もし今の仕事が辛いとしても、それを続けながら辛さを解消する方法などについて、も検討していきましょう。