あなたのお仕事について具体的に教えてください。
形成外科医です。2020年1月に千里中央駅前に「りょうこ皮ふ科クリニック」を開院しました。それまで他の皮膚科クリニックだったところを居抜きで継承しました。一般・小児皮膚科、美容皮膚科、形成外科の3つの診療科目を掲げています。切れ目のない医療サービス提供のために保険診療・自由診療の両方に対応しており、患者の人数で言えば自由診療が6~7割、保険診療が3~4割といったところです。
この仕事を始めたきっかけを教えてください。
父が医師でした。家族でマンションに住んでいたのですが、夜などに同じマンションの住人が「ちょっと診て欲しい」「相談がある」と父を訪ねて来ることがよくありました。それを見て「人の役に立てる」「人の悩みやコンプレックスを解消できる」「人を笑顔にできる」と医師の仕事のすばらしさを実感し、自身も医師になろうと決めました。
もともと裁縫などの物作りが得意でしたので、外科など手術を行う診療科目に興味があったのですが、研修医として様々な科を経験する中で形成外科に魅力を感じました。
例えば、手術後に皮膚を縫合する際も、外科医の場合は、縫合自体は手術の主目的ではありませから、それこそ「塞がればいい」とホチキスで止めることもあります。しかし、人目につきやすい場所に手術痕が残ることは、その後の人生に大きな影響を及ぼす可能性もあります。
それに対して形成外科医は、縫合した跡がなるべく残らないように細い糸を使って丁寧に施術するなど皮膚を非常に繊細に扱います。そうした部分に女性の強みが活かせるのではないかと考えました。実際に、女性の形成外科医は目に見えて増えています。このほか、症状に対するアプローチ方法が1つではなく、人体の多くの場所に関わることから、形成外科医は医師の中でも総合的な知識が必要になることにもやりがいを感じました。
あなたの強みは何ですか?
「共感力」です。例えば受診する人の多くは、自分の見た目に悩みやコンプレックスを持ち、自己肯定感が低くなっています。医師として必要なのは、まず本人の悩みと、どのようにしてそれを解決したいのかを正確に聞き出すことです。それには相手としっかり対話を重ねて、相手が私に対して何でも話せる関係を構築することが必要です。そのために「相手の言うことを否定せず、共感し、寄り添う」ことを常に心がけてきました。私の診療は実際の治療前の対話に多くの時間をかけます。その点で言えば、心療内科や心理カウンセラー的な性格が強いかもしれません。また大病院でなく、個人クリニックである点も対話に時間をかけられるという点では理想的です。
その結果として、対話だけで本人の悩みやコンプレックスが解消され、実際の治療に至らないというケースもたまにありますが、そうした人はファンになってくれ、スキンケア用品を買いに来てくれたり、友人や家族にクリニックを紹介してくれたりします。
あなたの使命とは何ですか?
見た目の悩みやコンプレックスを解消することで、心も明るくなります。性格が社交的になり、仕事や恋愛など何事にも前向きに取り組めるようになるなど、大きな効果があります。治療を通じて多くの人たちが、こうしたポジティブな生き方をできる世の中を作る手伝いをしていきたいと考えています。
今、日本では熱中症対策もあり、状況に応じてマスクを外すことが推奨されていますが、特に女性の中には「マスクを外した顔に自信がない」「人に顔を見られるのが恥ずかしい」と感じ、マスクを外せない人が少なくありません。また、テレワークやオンラインミーティングが減り、対面での仕事が増える中で、自分の顔が気になるビジネスパーソンも増えています。コロナ禍から日常生活に戻る過度期の中で、形成外科・美容皮膚科が果たす役割も増してきていると実感しています。
あなたのこれからの夢を聞かせて下さい。
私1人で直接診ることができる人の数は限られています。もっと多くの人たちを笑顔にできればと考え、スキンケア用品など独自に開発したドクターズコスメを販売するサイトの運営とオンライン診療を開始しました。まずは、このネットワークを大きくし、将来的にはオンラインサロンも運営したいと考えています。
また、今年10月にはクリニックを拡張する計画です。ドクターズコスメの展示・販売スペースを充実させ、予約不要で誰でも好きなときに来られるようにします。形成外科・美容皮膚科というと、馴染みがない人も多いと思いますが、こうした活動を通じて、多くの人たちにとって身近な存在であることを知ってもらい、何かあれば気軽に行ける社会を作っていければと思います。
最後に、夢や目標に向かって新たな一歩を踏み出そうとしている方へ、メッセージをお願いします。
まず「自分の夢や目標は、どんどん周囲に話す」という点です。その夢や目標を知った人の中から、必ず応援・協力してくれる人が出てきます。私も「いつかは自分のクリニックを持ちたい」ということを口にしてきました。その中で「時期尚早かもしれないけれど…」と今回の継承の話が持ち込まれました。
次に「チャンスと感じたら、即座に一歩を踏み出す」ことです。クリニックを開業したとき、私には1歳、0歳の2人の子どもがいました。普通に考えれば育児で起業どころではありません。しかし、本当に自分がやりたいことならば、どれだけ多忙でも時間を作って準備はできるものです。「忙しい」「もう少し機が熟してから」などと考え、行動に移さないのはもったいないことです。もちろん、一歩を踏み出した後に、様々な問題にぶつかることもありますが、それはその時に対応を考えれば済む話です。まず一歩を踏み出さないと何も始まりませんし、踏み出したことで新たに見えて来るものも沢山あります。