はたつんさんのお仕事について具体的に教えてください。
現在、3つの仕事をしています。まず、現役介護職としてケアの現場に入っています。2023年の春で13年目に入りました。介護福祉士の資格も保有しています。今は夜勤専従で勤務しています。
次に、チキンスープというバンドでボーカルを担当しています。こちらのキャリアも介護とほぼ同じぐらいです。また、バンドのメンバー全員が介護に関わる仕事をしています。
3つ目が介護系インフルエンサーです。1年前から「はたつん介護士」というYouTubeチャンネルにて「介護の仕事経験」「介護現場あるある」といったテーマの動画をほぼ毎日のペースでアップしています。このほかTikTok、Instagramで発信を行っていますが、いずれも「介護現場で頑張る人たちを応援する、元気づける」がテーマです。
この仕事を始めたきっかけを教えてください。
まず、父がギターをやっていたこともあり、小さい頃から音楽が身近な存在でした。そうした環境の中で、自然に「将来はみんなを笑顔にできるスターになりたい。武道館ライブができるアーティストになりたい」と思うようになりました。
学校で専門的に音楽を学び、卒業後もバンド活動を続けようと考えていました。「音楽と仕事の両立をどうしようか」思っていたときに、メンバーの1人から「自分は介護の仕事をする。一緒にやらないか」と誘われたことから介護の道に進みました。
インフルエンサーについては、当初はマルチ系、美容系などとして活動していたのですが、ある日「介護現場あるある」テーマにTikTokで投稿したところ、100万回を超す再生数となりました。これをきっかけに、介護現場での経験を活かし、介護に特化した発信をするようになりました。
はたつんさんの強みは何ですか?
「粘り強いこと」「夢や目標に向かって努力を惜しまず、最後までやり遂げる力がある」ことです。例えば、介護職になった当初は、私はレクリエーションを担当することが大の苦手でした。しかし、好きな音楽を活用したレクリエーションを自分で企画・運営するなどして、苦手意識を克服しました。
また、デイサービスのご利用者様の中に音楽活動をしていた方がいて「最後にもう一度自分のコンサートをしたい」という希望を口にしました。それを叶えるためにコンサートを企画しました。当日はご利用者様やそのご家族、スタッフなどが一緒になってとても楽しい時間を過ごすことができました。このように、一見「無理だ」と思えることでも諦めずに遂行します。バンドもインフルエンサーとしての活動も、順風満帆なときばかりではありませんでしたが、それでも続けて来られたのは、こうした私の性格と「同じ夢に向かって頑張る仲間との絆を大切にする」という想いの強さが大きく影響していると思います。
はたつんさんの使命とは何ですか?
インフルエンサーを始めてから、フォロワーの介護職の方から様々なコメントをもらうようになりました。それを見ていると、「何か伝えたいことや悩みがあるが、職場や家族には言えない」という人が非常に多いと実感します。こうした「声を上げられない介護職」に代わって、私が様々な発信をすることで、少しでも介護職が元気になり、介護業界全体が活気と笑顔であふれるようにすることです。
また、学生からは「投稿を見て、『介護職って楽しそうだな』と思い、介護の道に進むことに決めました」というコメントをもらったこともありました。私は、介護職は、ご利用者様の人生をサポートする「最高にかっこいい仕事」だと思っています。この学生のように、介護の仕事に誇りと憧れを持つ人を、私の発信を通じて増やしていきたいと思います。
はたつんさんの、これからの夢を聞かせてください。
子どものころからの夢である「武道館ライブ」はいつか絶対に叶えたいです。そこにはご利用者様をはじめ、私たちに関わる全ての人を呼びたいと思います。ご利用者様の中には「あなたが武道館でライブするまでは、紅白歌合戦に出るまでは、長生きをするから、絶対に夢を叶えてね」と言ってくれた方が何人もいました。しかし、それを果たせないままにお別れをしてしまったケースも少なくありません。私の夢はご利用者様との約束でもあります。約束は果たさなければいけません。
また、介護現場で働く皆さんが元気になれる楽曲を作りたいと考えています。通勤時に聴いたり、朝礼のときにみんなで歌ったりすることでモチベーションがあがり、1日中前向きに働ける、そうした曲を考えています。
最後に、夢や目標に向かって新たな一歩を踏み出そうとしている方へ、メッセージをお願いします。
まず、「なりたい自分」「目指す姿」をしっかりと描き、その上で一歩を踏み出すことが大切だと思います。最初の一歩を踏み出すのはとても勇気がいることですし、踏み出した先には障害やリスクがあるかもしれません。しかし、踏み出さなければ夢には近づけません。そして、私は「立ち止まらない限りは失敗ではない」と考えています。障害にぶつかったら、失敗したかもと思ったら、新しい道を求めて進む方向を変えればいいのです。
私自身、10年以上かかって、やっと「なりたい自分に近づいてきた」と実感しているところです。まだまだ歩みを止めるつもりはありません。一緒に頑張りましょう。