――あなたのお仕事について具体的に教えてください。
2021年6月に設立した一般社団法人CreateYourLifeの代表理事です。またここが実施する研修事業「ケアピストカレッジ」の専任講師として活動しています。「ケアピストカレッジ」では、確かな知識と技術に基づき、現場で即戦力となり、成果を出せるプロの介護福祉士を養成する「介護福祉士実務者研修」を提供しています。
また「人と人とをつなぐ」をテーマにしたイベントや勉強会を月1~2回のペースで企画・開催しています。イベントは、元々は介護・福祉のカラーを前面に出した内容でしたが、どうしても参加者が限定されてしまう上に、参加者の内輪の満足だけで終わりがちでした。今は、「介護関係者以外は介護・福祉について詳しく学ばなくてもいい。何か困ったときに相談ができる専門家と沢山つながることが大事。その為には、まずは楽しいことをして仲良くなろう」というスタンスです。
介護の仕事に誇りを持てる“プロ”を育てていきたい
――この仕事を始めたきっかけを教えてください。
30歳のときに介護現場で働き始めました。3ヵ月目に「自立支援」の考え方を知りました。利用者を主人公として考え「その人が持っている力を発揮し暮らしをより良いものにする」を追求していく考えに素晴らしさを感じ、介護の世界にどっぷりはまりました。
その後は大手カレッジで非常勤講師として働きましたが、次第に疑問を感じるようになりました。授業は大人数で、受講生一人ひとりの理解度に合わせることよりも「効率」が優先されました。しかも、現場ではすでに通用しないような知識、実践で活かしづらい内容がカリキュラムに組み込まれていて、それに従わざるを得ない状況でした。
加えて、介護福祉士国家試験に必要な研修ということで、「学ぶ」よりも「修了する」が目的になってしまっていることにも強い違和感を抱いていました。本来、介護の仕事はもっと誇りを持てるもののはずです。その本質に触れる前に形だけの学びで終わってしまうことがどうしても我慢できませんでした。そこで、自分の考える理想の教育を実現する場としてケアピストカレッジを立ち上げました。指示されたことをこなすだけでなく、自分で根拠を持って考え、主体的に判断し、結果に責任を持てる。そして、介護の仕事に誇りを持てる。そんな“プロ”の介護福祉士を育てていきたいと考えました。
介護現場での豊富な経験や学びが強みに
――あなたの強みは何ですか?
介護現場での豊富な経験と、数々の失敗から得た深い学び、そしてそれらを共有することで生まれる共感力です。理想論や格好良い話ではなく、私自身も経験した多くの失敗を通して、「なぜ上手くいかなかったのか?」「どうすれば改善できるのか?」といった生きた教訓を伝えすることができます。教科書には載っていない現場のリアルな課題も肌で感じてきたからこそ、研修などで伝える内容は、机上の空論ではなく、具体的な失敗事例に基づいた、実践的な解決策につながるものと自負しています。同じような壁にぶつかった経験のある方には、特に深く共感してもらえると感じています。自身の失敗を糧に、他の方の成長をサポートできることが私の強みです。
学びと成長の機会を等しく提供していきたい
――あなたの使命とは何ですか?
根拠のある介護の普及を通して、高齢者には穏やかで豊かな「老いを楽しむ」時間を、そして介護に携わる職員には専門職としての誇りと成長を実感しながら「老いを楽しむ」 ことができる環境を提供できるプロの介護福祉士を育成することです。双方が「老い」を肯定的に捉え、共に喜びを分かち合えるような介護を実現することです。
また、法人のミッションとして「介護研修難民ゼロ」ことを掲げています。一般的な人材養成機関は学校形式で、受講生に通ってもらいます。それに対して、私は受講を希望する人たちのところに出張して講義を行っています。
私は京都府最北端の京丹後市に住んでいるのですが、この地域の介護職は「学びの機会が少ない」ことが問題です。研修やセミナーなどが行われているのは、近くても京都や大阪などの都市部です。そこまで行くのは金銭的負担や時間的負担が大きく、諦めざるを得ない人がいます。また、学び・成長の機会が少ないことが、給与などの処遇が良くならないことの原因にもなってしまっています。離島や過疎地など、同様の問題を抱えている地域は多いかと思います。そうしたところで頑張っている介護職にも、学びと成長の機会を等しく提供していくことが私の使命と考えています。
ただし、私が動ける範囲には限界があります。そこで、講師を目指す人には私が使用する資料などを全て提供し、自由に活用できるようにしています。こうしてファシリテーターのような形で活動する人を各地で増やし、教育を受ける機会を全国に広げていきます。
「ケアピスト」を育成したい
――あなたのこれからの夢を聞かせてください
「老いを楽しむ」社会の実現に貢献するため、ケアのスペシャリストである「ケアピスト」を育成することです。私が創ったこの「ケアピスト」が、根拠のある介護を実践し、高齢者の方々が安心して豊かな時間を過ごせるように、そして介護職員が誇りを持って働けるように、人材育成に全力を尽くします。
一歩一歩が、あなたを成長させ、夢や目標へと近づけてくれる
――最後に、夢や目標に向かって新たな一歩を踏み出そうとしている方へ、メッセージをお願いします。
新たな一歩を踏み出すことは、希望と少しの不安が入り混じるかもしれません。これまで私もたくさんの夢や目標を描き、ときには失敗を恐れ、立ち止まってしまうこともありました。しかし、その度に、失敗から学び、そこから得た経験が、今の私を支える力となっています。 あなたが目指す未来には、まだ見ぬ素晴らしい景色が広がっているはずです。困難に直面することもあるかもしれませんが、その一歩一歩が、あなたを成長させ、夢や目標へと近づけてくれます。
私が「老いを楽しむ」社会を目指し、ケアのスペシャリストである「ケアピスト」の育成に情熱を注いでいるように、あなたの心にある熱い想いを大切にしてください。その情熱こそが、未来を切り拓く原動力となります。 恐れに、あなたの信じる道を進んでください。その一歩が、あなた自身の未来を、そしてきっと誰 かの未来をも明るく照らすと信じています。応援しています。