――あなたのお仕事について具体的に教えてください。
乳腺外科・外科医です。京都府立医科大学附属病院など複数の病院で勤務し、2023年4月に京都市で乳腺外科、外科、婦人科を主体にした「ソウクリニック四条烏丸」を開院しました。医師は私を含めて常勤2名、非常勤3名体制です。常勤医はいずれも女性です。
また、変わったところとして自由診療の美容皮膚科も手掛けています。「いきなり専門の美容皮膚科に行くのは、費用もわからないので少し不安がある」という方の「まずは保険診療も手掛けているクリニックに相談したい」というニーズに対応しています。
女性の医療に携わりたい
――この仕事を始めたきっかけを教えてください。
両親をはじめ親戚に医師が多かったこともあり、誰に言われるまでもなく自然に「将来は医師になる」と考えるようになりました。医師以外の選択肢はイメージがつかなかったです。小学校の卒業文集にも、将来の夢は医師と書いています。
当初は「唯一『治す』のではなく『産み出す』医療である」という点に魅力を感じて産婦人科医を希望していました。しかし、大学5年生のときに若手の産婦人科医師から「やりがいは非常にある。しかしかなり多忙だ」という話を直接聞き、「結婚・出産という自分が描く将来像と、医師の仕事を両立させることが難しいのではないか」と不安を感じるようになりました。
「女性の医療に携わりたい」という気持ちはずっとありましたので、最終的に産婦人科医ではなく乳腺外科医を選びました。「1人の患者に対して最初から最後まで自分1人で関わることができる」という点も、乳腺外科医を選択する理由になりました。
考え方がポジティブで必要以上にくよくよしない性格
――あなたの強みは何ですか?
母は、何かあっても私や弟たちには「あなたたちは大丈夫だから」と言葉をかける人でした。それを聞いて育ったこともあり、考え方がポジティブで必要以上にくよくよしない性格という点です。私自身がこれまでの人生の中で「最終的に、選択が誤りだった」と後悔する機会があまりなかったこと、そして自分の判断に対しても、特に根拠があるわけではありませんが「大丈夫。きっといい結果になる」と自信を持つことができるようになったのは、母の言葉がけのおかげだと思っています。
もちろん、中には自分の思うような結果が得られないこともあります。その場合でも失敗したとは思わず「次に改善をするチャンスがもらえた」と前向きに考えることができます。プライベートでは離婚、再婚を経験し、その間にはシングルマザーの時期もありました。それらを「大変なこと」と考える人もいらっしゃるかもしれません。けれど、私は「人生におけるイベントの1つに過ぎない」と考え、むしろ楽しもうと切り替えるマインドで過ごすようにしてきました。
女性として、乳がんに対する啓発をしっかり行っていくこと
――あなたの使命とは何ですか?
勤務医時代は乳がんの手術や化学療法などに携わってきましたが、開業してからはその機会が少なくなりました。その分、乳腺外科医として、女性として、乳がんに対する啓発をしっかり行っていくことです。最近は乳がんをテーマにセミナーを行ったり、SNSを通じて情報発信を行ったりすることに力を入れています。
今までは、日本人女性の9人に1人が乳がんにかかると言われてきました。しかし最近では、寿命が延びたことやがんを発見できる技術が高まったこと、女性の社会進出など様々な理由で、その割合は8人に1人程度にまで高まってきています。誰がかかっても不思議ではない病気です。それにも関わらず、乳がん検診を受けている女性は半分程度と、検診への関心は高くありません。
乳がんは40代から発生率が高くなります。そして、がんの中でほぼ唯一、自分自身で見たり触ったりしてチェックができるのが特徴です。1人でも多くの人が乳がんを「自分ごと」として考える社会を作っていくこと、そして乳がんにより悲しい思いをする人を減らすことが使命と考えています。
もっと場所に縛られずに勤務する医師の働き方が可能になれば
――あなたのこれからの夢を聞かせてください。
最近ではオンライン診療も広がりを見せていますが、あくまでもできるのは問診です。実際の診療、治療行為は医師が患者のもとに出向かないとできません。その点では医師や看護師はブルーカラー職の性格が強いと言えると思います。
しかし、実際に私が出産や育児を経験する中で、「女性医師が患者の元に駆けつけられる状況を維持し続けるのは難しい」と実感しました。やはり、どうしても現場から離れなくてはいけない時期が出てきます。メディアなどには「仕事も家事も育児も全てこなす女性医師」が登場することもありますが、それはごく一部のスーパー医師で、多くの医療職は仕事と家庭をいかに両立させていくかに悩んでいます。こうした問題を解決していければと考えています。
もちろん、オンラインで医師が指示を出して遠隔で治療行為をするなどというのは、関連する法律の改正や医療ロボットなどのテクノロジーなども絡んでくる話ですので、私1人の力でどうこうなるものではありません。それでも将来は現在よりも、もっと場所に縛られずに勤務する医師の働き方が可能になれば素晴らしいと考えています。そのことが結果的に医療職不足の解消にもつながると思います。
軸が決まれば目標も自然にできる
――最後に、夢や目標に向かって新たな一歩を踏み出そうとしている方へ、メッセージをお願いします。
「仕事選び」という点でいえば「自分が何をしたいのか」「自分は何になりたいのか」というしっかりした軸を1本持つようにするのが大切だとおもっています。軸が決まれば目標も自然にできますし、それに向けて自分が何をすればいいのかが見えてきます。
そして、実際に職場を選ぶ際には、「自分の目標に対して何か得られるものがあるかどうか」が重要です。この際、自分とは目標が違う他人の評価や判断はあまりあてにしないことです。例え、世間で「ブラック企業」と言われている職場であったとしても、収入やスキル、経験など目標に対して得られるものがあるのならば選択肢の中に入ります。
そして、「自分を大切にしてくれる職場であるか」という点も重要です。医療・介護・福祉職は人を幸せにするのが仕事です。自分が幸せでないと人を幸せにすることはできないと考えています。







